聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
「いえ、いいです。すみません、踏み込んだ質問しないって言ったのに…」
そう言ってまた美桜が俯くと、夏樹はまた美桜の顔を覗き込んできた。
今度は目が合ってしまった。
端正な顔立ちに真剣な表情。
美桜は、また頬が熱くなるのを感じた。
そんな美桜を見て、夏樹はフッと柔らかく笑うと美桜を覗き込むのをやめて体勢を立て直し、口を開いた。
「みなみは、いとこ。女除けにって言って、よく俺が女子と話してたら間に入ってくれるだけで、たまに一緒に帰ってるのは、女除けしてもらうかわりに、家まで送りながら、あいつの彼氏の愚痴とか聞いてるだけ。」
――いとこ!?
「そ、そうなんですね。」
「うん。でも皆には内緒ね。女除け効果が薄れるから。学校の先生も知らないし。」
――女除けしないといけないくらい、堀越先輩ってモテるんだ…。
「安心した?」
そう言われたので夏樹をチラッと見ると、夏樹が柔らかい表情で美桜を見ていた。
「は、はい…」
思わず美桜がそう返すと、夏樹は嬉しそうに笑った。
――堀越先輩って、チャラく見えるだけなのかな。根は真面目…