聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
「今日のレースちゃんは桃みたいだな。りんごほど赤くないって感じで。」
「…前言撤回します。」
――全然真面目じゃなかった!!
「え、なになに?聞こえなかった。」
「いいです、聞こえなくて。」
「えー?気になる!」
そう言って、笑う夏樹を置いて、美桜はまた歩きだした。
「あ、待って待って!ごめんって。桃嫌いなの?」
「桃は好きです!」
「好きなんだ笑」
「それより!先輩が話したいことあるって言ってたの、なんですか?もう駅に着くから手短にお願いします。」
美桜が駅の入口に向かって歩きながら尋ねると、夏樹は「あ、電車なんだ」と言って歩みを止めた。
「いいや。また今度で。」
「え!?気になるじゃないですか!」
「気になるんなら、また近々一緒に帰ろうぜ。今週金曜日の放課後、空いてる?」
「空いてますけど…」