さとうさん。
まともに、話したこともない
名前だけ同じのさとうさんに
これを言ってどうなるのか…
言った瞬間に思ったし、恥ずかしくなったが
それが本音だった。
いや、逆にいえば
なんにも関わったことない人だから
言えたのか…
さとうさんは、手に顎をのせ
一瞬考え込む仕草をし、俺の目の前に立った。
そして、俺の頭を両手で優しく包み
そのまま、ぐっと自分に引き寄せ、
気が付くと、俺の頭とさとうさんの頭が
コツンとオデコをくっつけていた。
[…っん??]
俺は、瞬時に離れ、彼女の目を見た。
彼女も俺の目を、一点に見つめ
“あなたは、さとうさん。
わたしも、さとうさん。
どこにでも居そうなで
親戚みたいだけど
全くの他人。みんなそう。
人間なんてそんなもの。何者でもない…
だから、なに?”
真顔でそこまで言い終えると
“カッコつかなきゃだめですか?”
と俺を見つめながら、
困ったような顔で微笑んだ。