感情ラベリング
幼稚園の頃、私はバレーボールに出会った。
ストライカーが打ったスパイクが体育館の床を打ち付ける音が、たまらなく好きになった。
まだ小さい身体ではままならなかったけど、テレビで試合を見て嬉しそうに手を叩いてた、と母から聞いた。

小学校に入学してからからは地域のスポーツチームでバレーをやった。
低学年ではやはり、上手くジャンプなんてできなかったし、腕が真っ赤になった。
だけど、何度も練習を重ねるにつれてだんだんといい音を出せるようになってきて、それがたまらなく嬉しかったんだ。

「白浪さんのスパイクかっこいい〜!」
「なんでそんないい音が出せるの?」

同級生から向けられるきらきらした眼差しも悪い気分じゃなかった。

中学生に上がってからは地域のスポーツチームではなくクラブチームに所属し、バレー部でもプレーをした。
私の生活はバレー漬けだった。

「次の部長は白浪さんにお願いしようと思います」

2年の冬、3年生の先輩から告げられたこの言葉。
ここから先はよくある話だよ。
わたしが先輩や監督から気に入られてるのが気に入らないっていうそれだけが理由だった。

私は誰よりも練習しただけなのに。
部活終わりにクラブで練習なんて当たり前だった。
みんなが遊んでいる間、私は練習してたんだ。
わたしは、悪くない。

チームメイトがみんなにどう話したのかは分からない。
だけど、私はクラスで孤立していった。
先生にバレないような、嫌がらせ。

すれ違いざまに軽くぶつかったり、足を引っ掛けられたり。
昼休みに教室の隅で私を見てクスクス笑ったり。
体育のバスケの時間にはわざとボールを当てられたり。
図工の時間に私の服に絵の具をつけたり。

これは卒業後に知った話だけど、私を省いたクラスLINEをつくり、そこで移動教室の変更の連絡などをしていたらしい。

わたしは、3年の夏の大会前にバレー部を辞めた。
部活での居心地が悪くて、上手くプレーができなくなってしまった。
嫌われている私のトスを打ってくれるのだろうか、と信用ができなくなり、トスをあげるのが怖くなってしまった。

そのまま引きずるようにクラブチームも辞めた。
あんなにバレーで満たされていた私の人生は簡単に変わってしまった。

それでもバレーは好きだった。
夏のオリンピックではバレーの試合はちゃんとチェックしたし、春は高校生の全国大会を見に行った。



今でもボールを目の前にするとこんなにも胸が高鳴る。
上がったボールが私の目の前に浮いた。

右隣の子を見て、こっち、と私にトスをあげるように促す。
綺麗に上がったボール。
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