絶対に結婚したくない令嬢、辺境のケダモノと呼ばれる将軍閣下の押しかけ妻になる
「お裁縫道具とドレス生地は、きっとその人のためよ。ポポルファミリーだってお子様にあげるために用意されたに決まってるわ……!」
べそべそと泣くフランチェスカだが、アンナは怪訝そうに眉をひそめた。
「うーん……そうなんですかねぇ……? ちょっとピンとこないんですけど」
「じゃあほかに裁縫道具と人形の組み合わせで、考えられることはあるっていうの?」
どう考えても、妻子へのプレゼントに他ならないではないか。
「まぁ、そう言われるとすぐには出て来ませんけど。おっしゃる通り、裁縫道具っていうのが個人的な感じはしますよね……」
彼女の言葉にフランチェスカは「ほら御覧なさい」と唇を尖らせるが、アンナも負けずに言い返してきた。
「いや、そうは言っても、そもそも作家のお嬢様は、かなりたくましい想像力をお持ちですからね。素人のあたしにはそんなすぐ思いつきませんよ」
そしてアンナは、ようやく泣き止んだフランチェスカの正面にさっと腰を下ろし、ネズミを狙う猫のように身を低くして、ささやいた。
「ここはもう、本当のことを確かめるしかないんじゃないんですか?」
「どうやって?」
「ダニエルさんに聞くとか」
「マティアス様には秘密にしている愛人と子供がいるかって? マティアス様が隠しておられることを、彼が正直に話してくれるわけないじゃない」
確かにダニエルはフランチェスカに友好的だが、それはあくまでもマティアスの配偶者だからよくしてくれるだけだ。
彼の主人はマティアスただひとり。マティアスの不利益になることをするはずがないのである。
フランチェスカはまつ毛の端に残った涙を指でぬぐうと、ゆっくりと息を吐く。
「……自分で調べるしかないわね」
「出た、お嬢様の突飛もない行動力!」
アンナが眉を八の字にしてうんざりした顔になった。
毎度付き合わされるアンナには申し訳ないが、そこはもうフランチェスカに着いてきた以上避けられないことだと諦めてもらうしかない。
べそべそと泣くフランチェスカだが、アンナは怪訝そうに眉をひそめた。
「うーん……そうなんですかねぇ……? ちょっとピンとこないんですけど」
「じゃあほかに裁縫道具と人形の組み合わせで、考えられることはあるっていうの?」
どう考えても、妻子へのプレゼントに他ならないではないか。
「まぁ、そう言われるとすぐには出て来ませんけど。おっしゃる通り、裁縫道具っていうのが個人的な感じはしますよね……」
彼女の言葉にフランチェスカは「ほら御覧なさい」と唇を尖らせるが、アンナも負けずに言い返してきた。
「いや、そうは言っても、そもそも作家のお嬢様は、かなりたくましい想像力をお持ちですからね。素人のあたしにはそんなすぐ思いつきませんよ」
そしてアンナは、ようやく泣き止んだフランチェスカの正面にさっと腰を下ろし、ネズミを狙う猫のように身を低くして、ささやいた。
「ここはもう、本当のことを確かめるしかないんじゃないんですか?」
「どうやって?」
「ダニエルさんに聞くとか」
「マティアス様には秘密にしている愛人と子供がいるかって? マティアス様が隠しておられることを、彼が正直に話してくれるわけないじゃない」
確かにダニエルはフランチェスカに友好的だが、それはあくまでもマティアスの配偶者だからよくしてくれるだけだ。
彼の主人はマティアスただひとり。マティアスの不利益になることをするはずがないのである。
フランチェスカはまつ毛の端に残った涙を指でぬぐうと、ゆっくりと息を吐く。
「……自分で調べるしかないわね」
「出た、お嬢様の突飛もない行動力!」
アンナが眉を八の字にしてうんざりした顔になった。
毎度付き合わされるアンナには申し訳ないが、そこはもうフランチェスカに着いてきた以上避けられないことだと諦めてもらうしかない。