絶対に結婚したくない令嬢、辺境のケダモノと呼ばれる将軍閣下の押しかけ妻になる
「フランチェスカ。迎えに来た」
少し照れくさそうに手を伸ばすマティアスを見て、フランチェスカはここが『鏡の間』だということを忘れ、全速力で走り、夫の腕の中に飛び込む。
「マティアス様!」
会いたくてたまらないのに、帰ったらあとはもう別れ話をするしかないのだと思うと、辛かった。
だが今は違う。
『迎えに来た』という言葉を聞いた瞬間、やはり自分はこの人と離れられないとはっきりとわかった。
どうして皇女様と一緒にいるの?
帰ると伝えていたのに、なぜわざわざ迎えに来てくれたの?
聞きたいことはいっぱいあるのに、言葉が何も出てこない。
おでこをグリグリと押し付けていると、背中に回した腕で強く抱きしめられる。
そしてマティアスが耳元でささやいた。
「――先に言わせてくれ。俺には妻子などいない」
「えっ?」
ビックリして顔をあげると同時に、フランチェスカの頬にマティアスの大きな手がのる。
緑の瞳がすぐ目の前にある。このまま吸い込まれてしまいそうだ。
「俺はずっとひとりだった。ひとりでいいと思っていた。だがあなたに出会って……愛してしまった」
「――」
驚きすぎて頭が真っ白になる。
(今、愛……? 愛してしまったって言われたような……いや、そんなまさか……でも……)
きょとんとしたフランチェスカを見てマティアスは苦笑するように微笑むと、頬を撫でる。
「フランチェスカ、君を愛している。君を失いたくない。いや……俺を手放さないでくれ」
マティアスはそう言って、まるで眩しいものを見るように目を細めた。
それはずっと夢見ていたマティアスからの愛の言葉だった。
「~~っ……」
フランチェスカの青い瞳から涙がこぼれ、声にならない想いが、嗚咽になって唇から溢れる。
無我夢中でしがみつくと、それ以上の力で抱きしめられた。
このまま死んでもいい――大げさでも何でもなく本気でそう思う。
マティアスは声を押し殺して泣くフランチェスカの背中を優しく撫でると、それから背後を振り返って皇女マリカと王太子レオンハルトに一礼した。
フランチェスカの態度に、白騎士が間違いなく『マティアス・ド・シドニア伯』だと皆がようやく理解したようだ。
少し照れくさそうに手を伸ばすマティアスを見て、フランチェスカはここが『鏡の間』だということを忘れ、全速力で走り、夫の腕の中に飛び込む。
「マティアス様!」
会いたくてたまらないのに、帰ったらあとはもう別れ話をするしかないのだと思うと、辛かった。
だが今は違う。
『迎えに来た』という言葉を聞いた瞬間、やはり自分はこの人と離れられないとはっきりとわかった。
どうして皇女様と一緒にいるの?
帰ると伝えていたのに、なぜわざわざ迎えに来てくれたの?
聞きたいことはいっぱいあるのに、言葉が何も出てこない。
おでこをグリグリと押し付けていると、背中に回した腕で強く抱きしめられる。
そしてマティアスが耳元でささやいた。
「――先に言わせてくれ。俺には妻子などいない」
「えっ?」
ビックリして顔をあげると同時に、フランチェスカの頬にマティアスの大きな手がのる。
緑の瞳がすぐ目の前にある。このまま吸い込まれてしまいそうだ。
「俺はずっとひとりだった。ひとりでいいと思っていた。だがあなたに出会って……愛してしまった」
「――」
驚きすぎて頭が真っ白になる。
(今、愛……? 愛してしまったって言われたような……いや、そんなまさか……でも……)
きょとんとしたフランチェスカを見てマティアスは苦笑するように微笑むと、頬を撫でる。
「フランチェスカ、君を愛している。君を失いたくない。いや……俺を手放さないでくれ」
マティアスはそう言って、まるで眩しいものを見るように目を細めた。
それはずっと夢見ていたマティアスからの愛の言葉だった。
「~~っ……」
フランチェスカの青い瞳から涙がこぼれ、声にならない想いが、嗚咽になって唇から溢れる。
無我夢中でしがみつくと、それ以上の力で抱きしめられた。
このまま死んでもいい――大げさでも何でもなく本気でそう思う。
マティアスは声を押し殺して泣くフランチェスカの背中を優しく撫でると、それから背後を振り返って皇女マリカと王太子レオンハルトに一礼した。
フランチェスカの態度に、白騎士が間違いなく『マティアス・ド・シドニア伯』だと皆がようやく理解したようだ。