推しの歌い手さま~想像してたのと違うんだが…~
航太「はぁ……変な現場に出くわしちゃったよ……ジャジャンッ!!目の前に茶髪の不良と鼻垂れ少女が現れた。どうする?助ける?逃げる?」


偶然、航太が階段から下りてきたのだ。


ゲームのワンシーンのような話をしながら、横目でチラッとみる航太。

穂香は思わず誰が鼻垂れ少女やねんっ!!と心の中で思うが、言える空気でもない。

そのまま通り過ぎようとしていく航太に、穂香は俯き気味にチラッと視線を送る。


穂香(助けてくれるはず……ないよね……)


茶髪の男は、まだ許してくれない。


茶髪の男「お嬢ちゃん財布持ってるか?今日のパン代1000円で許してやるよ?それなら文句ないだろ?」


今度はカツアゲだ。


脅して金を取ろうとする茶髪の男に、穂香は涙声で話した。


穂香「お金持ってないんです……本当に許してください……」


茶髪の男「はぁ?泣いたって許さねぇよっ!!」


どうしても許してもらえず、泣いてしまう穂香。


穂香「ご……ごめんなさい……もう許してください……」


すると航太が、背を向けたまま静かに呟く。


航太「茶髪の不良のカツアゲ攻撃。鼻垂れ少女は泣いてしまった。どうする?
はぁ……女の子を泣かしちゃダメなのに……面倒だなぁ……」


そう言った瞬間、航太がこちらに向かって歩いてくる。


航太「いい加減許してやれよ?汚い手で俺の友達を触るんじゃねぇよ」


いつもの気だるい雰囲気の声とは違い、太くて低い声。
目も眠そうな目ではなく、鋭い視線で茶髪の男を睨んだ航太は、茶髪の男の手を掴んで振り払った。


穂香「あっ……」


怯んだ茶髪の男は航太から視線を反らして、うそぶく。


茶髪の男「今回は許してやるけど、次はないからな?」


こうして茶髪の男は、ポケットに手を入れて階段を上って行く。


航太も穂香に構うことなく、階段を下りていった。


航太「航太はレベルが上がった。はぁ……」


そう呟きながら。


(校内見学中の階段。終了)

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