推しの歌い手さま~想像してたのと違うんだが…~
穂香が不思議そうに尋ねると、航太が言った。
航太「小さな頃に金魚すくいをしたり……」
航太がその場から立ち上がり、山に咲いているツツジをいくつか取ってくる。
航太「この花をよく吸ったりしたよなぁ?って……」
航太はツツジの花を吸った後、違うツツジを穂香に渡す。
航太「これ吸ってみて?」
穂香が花を吸ってみると、甘い味がする。
穂香「甘いね?全然知らなかった」
航太はまた違う花を吸いながら立ち上がって、小川の方に行くと石を拾って投げた。
石は水面をピョンピョンと弾いて飛んでいく。
航太「こんな風に石を投げて、何回跳ねるか?って競争したり」
穂香「男の子はそうやって石を投げてたね?私は女だからしたことないけど」
航太は穂香の元に戻ってきて、隣に座った。
航太「女の子は石を投げたりしないかぁ……じゃあこういうのは?目を閉じてくれる?」
穂香は言われるままに目を閉じようとしたが、慌てて目を開いた。
穂香「あっ!!チューはダメだよ?私は日本人だし、他の国の人みたいにチューが挨拶とか思ってないから。それにまだ誰ともチューしたことないしっ!!航太くんが嫌いとかじゃないけど、ダメなものはダメだよーっ」
慌てて手をパタパタとさせながら早口で、捲し立てる穂香。
それに対して、キョトンと冷めた目で見ている航太。
航太「あのさ……そんなことしないから大丈夫」
穂香「じゃあ何をするつもり……?」
穂香はキスの妄想でいっぱいになり、顔を真っ赤にさせたまま俯いてしまう。