推しの歌い手さま~想像してたのと違うんだが…~
航太「いいから目を閉じて……」


穂香「はい……」


穂香はギュッと目を閉じて、少し体を震わせている。


穂香(航太くんの事、嫌いじゃない……でもそういうんじゃないっ!!チューはダメだよぉ……)


まだそんなことを考えている穂香の耳の上に枝が当たる。


穂香「えっ?何したの?」


航太「俺からのプレゼント。一緒に写真撮ろっか?」


穂香の肩に手を回して顔を寄せてくる航太がスマホを向ける。

顔の横でピースをして可愛らしい笑顔を見せた穂香。


航太「撮るよ~」


穂香「うん。」


こうして撮影した写真を二人で見る。


航太「いい感じじゃない?」


穂香が航太のスマホを見ると、耳の上に白のツツジが刺さっている。


穂香「この白いお花可愛いね?」


航太「女の子なら髪飾りを作ったりしたのかな?って」


穂香は自分の手をパンっと叩いて言った。


穂香「確かにこういう事をして遊んだ事があるっ!!」


航太「子供の頃の小さな思い出っていくつも覚えてるんだよなぁ……どうして最近の思い出って覚えてないんだろ……」



穂香は空を見上げて、その質問に答えた。


穂香「んーっとね?小さな頃って何をしても感動するんじゃないかな?
でも大きくなったら、いちいち感動しないじゃん?だから覚えてないの。
でも航太くんが今日おんぶしてくれた事も、めだかを捕まえてくれた事も、この可愛いお花をくれた事も、私はずっと忘れないよ?」


そう言って穂香はできる限り可愛い笑顔を作って、航太の方を見た。

しかし航太は真っ直ぐ向いたまま、小さく呟くだけ。


航太「そっか……」


穂香(えっ?えっ?それだけなんかーいっ!!
私は結構頑張って感謝を伝えたつもりなんだが……)


航太の突然の塩対応で、めだかの親子を小川に返してバイバイした事。
駅までおんぶしてくれた事。
あまり覚えてない穂香。



(春の遠足。下山中に辿り着いた小川。終了)









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