推しの歌い手さま~想像してたのと違うんだが…~

第6章~新ユニット誕生~



○7月初旬の暑い日の夜。穂香の部屋


クーラーの効いた部屋で、机に向かっている穂香が待っているのは、K様の生配信。


K様「こんばんはー。今日もよろしくお願いしまーすっ!!」


穂香「こんばんはーっ」


穂香はそう言いながら、スマホからコメントで【こんばんは】と打ち込む。


数人がK様に名前を呼ばれて「こんばんは」という挨拶があるが、凄いスピードでコメントが流れるので、穂香はまた名前を呼ばれる事はなかった。


穂香「今日も名前読んでもらえないじゃん……」


スマホから聞こえるK様の会話は、最近の出来事。レコーディングの話などの雑談が続く。


K様「今日の発表は、この前言ってたリュウさんとシンさんと組んだ期間限定のユニット名の発表です。

ユニット名は……アオハルの天使です。

この名前は僕が考えさせてもらいました。
皆さん青春してますか~?」


そんな話を聞きながら、最近の穂香はK様が航太ではないのか?と疑い始めていた。


合唱での歌声。
ぬいぐるみの件。
スマホから聞こえてくる会話の声質。
遠足で遅れたのはレコーディングがあったからでは?

などの事で疑っているのだ。


○穂香の回想。遠足の後の数日間。


穂香は学校で航太に何度か聞いてみた。

航太がぐったりと机に伏せている休憩時間に、穂香が声をかける。


穂香「なんでK様のぬいぐるみを持ってたの?私のドロドロのやつと、交換してくれたの?」


航太「持ってたんじゃなくて……俺はスプーン曲げられるんだ……」


穂香はすかさずツッコミを入れる。


穂香「話が飛躍してて分かりにくいっ!!俺はマジシャンなんだ。とかにして~」


またある日の穂香は、思い切って聞いてみた。


穂香「航太くんってK様じゃないよね?」


航太「K様……?毛様……?ありがたや~って、毛生えとるわいっ」


机に伏せたまま、頭をクシャクシャと触る航太に、その日も勢いよくツッコミを入れる穂香。


穂香「髪の薄い芸人の定番ギャグっ!!そんなこと聞いてないよーっ!?」


こうしていつも航太に、はぐらかされてしまう。



(穂香の回想。遠足の後の数日間。終了)



(7月初旬の暑い日の夜。穂香の部屋。終了)





< 38 / 100 >

この作品をシェア

pagetop