推しの歌い手さま~想像してたのと違うんだが…~
○ジェットコースター。


ジェットコースターの先頭に隣同士で乗り込むと、安全ベルトを締める二人。穂香は右側。航太は左側。
緊張した面持ちの穂香が言う。


穂香「先頭とか初めてなんだけど、怖くない?」


緊張している穂香とは対照的に、航大は余裕の笑みを浮かべている。


航大「先頭の方が怖いとか後ろの方が怖いとかあるのかな?」


穂香「うーん。どうなんだろ……?」


穂香(前の方が景色が見えるから怖い?後ろの方が下りの時のスピードの速い時間が長いような……?)


穂香が答えを探していると、プルルルルルという音が鳴って発車した。


ガタン、ガタン、カッカッカッカッ…


最初の急な登り坂。


穂香「私、高いところ苦手なんだよね……」


航大「俺は全然大丈夫っ!!」


航大の声が元気なので見てみると、もう顔が青ざめていて、笑顔がひきつってる。


穂香「航大くんも本当は苦手なんじゃないの?」


航大「そんな事ないって」


クスッと笑う穂香の余裕もここまで。
やはり高い場所になってくると、何も言えなくなってくる。


ジェットコースターが急降下し始めると、穂香は目を閉じて、変な声が出ないように歯を食い縛って耐えていた。


穂香(うるさくしちゃダメ。女の子を忘れちゃいけないっ!!)


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