推しの歌い手さま~想像してたのと違うんだが…~
穂香は今という答えに、クスクスと笑う。


穂香「今?確かにこんな観覧車乗ったことないもんね?一緒に写真撮ろっか?」


ハートの窓。ハートの上に飾られてるブーケに背を向けて、顔を寄せる二人。


穂香が自分の顔をスマホの画面で確認すると、お酒に酔ったみたいに真っ赤になっている。


穂香「あ……暑いもんね?私の顔が真っ赤じゃーんっ」


さっきの航太の可愛い発言からリズムを崩している穂香は、自分の顔を手で仰ぐ。


すると、航太がさりげなく穂香の肩に手を回して顔をピタリとくっつけてきた。


航太「ハイっチーズっ!!」


穂香のスマホにニコニコと幸せそうな航太と真っ赤な顔で緊張した面持ちのひきつった笑顔の穂香のツーショット写真が出来上がる。


航太も自分のスマホで同じポーズの写真を撮影し終わると、航太が自分の席に戻りながら言った。


航太「春の遠足の思い出って?泥だらけになったこと?」


すかさず穂香は手を上げて、航太を叩くフリをする。


穂香「怒るよ~?もう……航太くんが優しくしてくれた事に決まってるじゃん……」


穂香は航太に視線を合わせず、ハートの窓の外を眺めながら、消え入りそうな声で言う。

穂香は最大限に航太の事が好きだと伝えようとしていた。


穂香(優しくしたのは、穂香ちゃんが好きだからだよ?とか言ってくれたりして……)


そんな穂香の思いとは裏腹に、航太は塩対応だった。


航太「ほーん……」


航太はそれだけで何も言わずに、穂香の膝に置いてある本を取ってページを捲りながら眺めていた。


静かな空間で少し気まずい中、天井からアナウンスの放送が流れてくる。


アナウンス「お話は盛り上がってますでしょうか?」


穂香(この絵本のせいでちょっと気まずいんだが……)

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