推しの歌い手さま~想像してたのと違うんだが…~
航太は本を捲りながら、小さく呟く。


航太「盛り上がってまーす……」


穂香(しばらく静かなまま過ごしてまーす……)


アナウンス「そろそろ地上から100メートル
の頂上です。空の旅をもうしばらくお楽しみください」


航太「ほーい」


アナウンスにいちいち返事をする航太を見て、少しずつ落ち着いてくる穂香。

穂香は窓を眺めて、航太に言う。


穂香「頂上なんだって?外を見てみようよ?」


航太「うん。曇ってるけどいい眺めだね?」


二人はハート型の窓からしばらく景色を眺めていた。


穂香「今度は夜に来てみたいなぁ……夜景とか綺麗なんだろうな……」


穂香がそう言っても、もう一度一緒に乗ろう。という言葉は航太から聞かれず、本にあった質問をしてきた。


航太「二人はお互いの事をどう思いますか?せーのっ!!」


航太「大好きっ!!」穂香「えっ?」


穂香は航太の急な質問にタイミングに合わせる事ができなかった。


穂香「急にずるいよ~。もう一回っ!?」


穂香は今度は二人揃って「大好き」にしようと思って航太の顔を見ると、ガタンっと大きな音と共に、ゴンドラが激しく揺れた。


穂香は慌てて航太の腕にしがみつく。


穂香「キャーッ!!凄く揺れてるって!!怖いよぉっ!!」


航太はカタカタと体を震わせている半泣きで混乱している穂香を、包み込むように優しく抱き締めて小さく呟いた。


航太「大丈夫だから落ち着いて……」


しかし穂香の不安は消え去らない。


穂香「もしも観覧車がこのまま止まっちゃったら、はしご車がやって来て降りるんだよね?テレビで見たことあるもん。そんなの怖くて降りられないよぉ……」


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