推しの歌い手さま~想像してたのと違うんだが…~
声の主はリュウだった。


リュウ「Kには会えた?」


穂香は航太じゃなかったのか……?と、首を横に振ると、我慢していた涙が溢れて、力尽きたようにリュウの胸に泣きついた。


穂香「航太くんに会いたかったっ……航太くんに会いたかった……ヒック……ヒック……どうして何も言ってくれなかったのかな……うっ……くっ……私の事を嫌いだったのかな……」


泣きじゃくりながら、そう言うとリュウが優しく包み込むように抱き締めてくれた。


リュウ「うーん……好きだから言えなかったんじゃないかな?」


穂香「そんなの意味わかんないです……酷いよ………ヒック…………」


穂香は頭の中でドラマによくあるゲートで会えるシーンを思い浮かべては、実際に会えない事にショックを受ける。


リュウはそんな穂香の背中をトントンと叩いて、小さく呟いた。


リュウ「今すぐは無理だと思うけど、少しずつ忘れるようしようよ……?寂しい時は俺が一緒にいてあげるから……」


穂香(優しくされると……航太くんがいなくなっても、リュウさんが寂しさを埋めてくれるんじゃないのかな?って思っちゃう……
私ってズルい……最低だ……)


泣いてる時にかけられる優しい言葉は、心に突き刺さって、冷静な判断ができなくなってしまうもの。


リュウが体を離して、ターミナルビルの扉に指を指す。


「もう時間だよ。向こうから飛び立つ飛行機が見れるから行こうか?もうKは飛行機の中にいるだろうし、手を振るくらいならできるから。電車じゃないし、駆け込み乗車なんてする人いないから……」


穂香「はい……」


穂香は名残り惜しそうにゲートを見てから、リュウと歩き始めた。


< 83 / 100 >

この作品をシェア

pagetop