推しの歌い手さま~想像してたのと違うんだが…~

第13章~いつまでも~

○夏休みが終わった始業式の日の朝。穂香のクラスの教室。


航太がいなくても、特に何も変わらない教室。
男子は宿題をやったか?やっていないか?という話題。
女子は夏休みにどこに行ったか?という話題。

あちこちでそんな声が聞こえてくる教室で、穂香は誰も座っていない航太の席を見た。


穂香「間違って来たりしないよね……?」


寂しそうに見つめる穂香に、登校してきた亜美が声をかけてくる。


亜美「おはよーっ!!元気だった~。夏休みの間に何か変わったことあった?」



穂香はその瞬間、1つの出来事が思い浮かんだ。


ホテルの屋上でムード満点の中、リュウに告白された事だった。



○穂香の回想シーン。


リュウ「俺ならずっと穂香ちゃんの近くにいれるよ?アイツがダメなら、俺と付き合ってくれないかな?」


穂香「えっ……?」


穂香は一瞬迷った。


いつ帰ってくるか?帰ってこないのか?すらわからないのを待つよりも、航太を諦めてリュウを好きになる方が幸せなのではないか?と。


突然現れた優しいイケメンに心が揺らいたが、穂香は目を伏せて言った。


穂香「リュウさんは大人で優しくて、最高の人なのはわかってます。
でも……やっぱり航太くんを待ちたいんです。せっかく優しくしてもらったのに、ごめんなさい。」


それからも、リュウとはSNSでやり取りする事はあるものの、男女の関係という話題ではない。


アイスが食べたい。とか、美味しいかき氷見つけたよ。というような内容が、リュウから送られてくる程度で、会う事もなくなった。



(穂香の回想シーン。終了)



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