推しの歌い手さま～想像してたのと違うんだが…～

○卒業生前日の夜。穂香の部屋。


航太が留学してから、約2年半が過ぎた。

航太は慣れない英語圏での学校。
歌とダンスのレッスンで忙しいのか？

ライブ配信やSNSもほとんど更新されていない。

距離の近かった歌い手とは違う本格的なアーティストとしての道を歩んでいるのか？
それとも挫折してるのか？

そんな情報も日本にいる穂香には入ってこない。


穂香「来月から大学生になるから、独り暮らしか……亜美がいるから、あまり不安とかないけど……」


穂香は上京して女子大に通う事が決まった。
亜美も同じ大学に通うため、寝る前にSNSでメッセージのやり取りをしていた。


穂香のメッセージ「大学に行ったらサークルって何に入る？」


亜美のメッセージ「インカレサークルに決まりでしょ？イケメンに出会いたいもん」


穂香のメッセージ「インカレかぁ……」


穂香は女子大に通う為、男と接するとなると他校の生徒達と合同で運営されているインカレサークルに入る必要がある。


亜美のメッセージ「あっ!!そうそう。穂香は今でも航太くんが好きなの？」


穂香のメッセージ「うん。今でも好きだけど、いつ日本に帰ってくるのか？帰ってこないのか？わかんないし。諦めかけてるかなぁ……」


亜美のメッセージ「昨日ネットニュースで見たんだけど、4月に全米デビューするらしいよ？それで夏にはジャパンツアーがあるって。だから日本に戻ってくるみたいだよ？」


穂香は慌ててスマホで検索をかけると、ネットニュースが出てきた。


KOUTAという名義で、全米チャンプという音楽番組の公開オーディションで、チャンピオンになってデビューが決まったらしい。


穂香は自分の事のように跳び跳ねて喜ぶ。


穂香「頑張って良かったねーっ!!凄いっ!!凄いっ!!」


そのまま、1年くらい更新されていないが、祝福のコメントが山ほど並んでいるＫ様のSNSに書き込んだ。


穂香のコメント「デビューが決まったんだね？おめでとうっ!!」


どうせ返信なんてないと思っていたが、今回はすぐにリツイートしてくれた。


航太のコメント「ありがとう」


と一言だけ。


それだけで胸いっぱいの幸せな気持ちになれる穂香だった。