推しの歌い手さま~想像してたのと違うんだが…~
○卒業式後。校門の前。


生徒や保護者が行き来したり、記念撮影している校門の前で、航太が待っていた。


穂香は航太を見つけて小走りでやって来る。


穂香「お待たせ~。ごめん。待たせちゃって。さっきの話の続きがしたくて……」


さっきの話とは、穂香に恋人はできたか?という話題である。


穂香(航太くん。観覧車の時も話の続きができなかったし……ほら。さっきの話の続きして?)


穂香は告白してくれるものと信じて、待ってもらったのに、航太は全くそんな素振りを見せず、校門にある卒業式の看板を眺めている。


穂香「ねぇ?どうしたの?歩きながら話そっか?」


すると航太は独り言のように呟く。


航太「穂香ちゃんと一緒に写真撮りたいなぁ……」


穂香はニコッと笑って、航太の顔を覗き込んだ。


穂香「航太くんの卒業は夏だもんね?いいよ。一緒に撮ろっか?」


スマホを取り出して、その辺りにいた保護者の人が写真を撮ってくれる。


保護者の人「はーい。撮りますよ~」


航太と穂香は、卒業式の看板の前で、二人並んで記念撮影。


その時航太が保護者の人に向かって、手を伸ばして言う。


航太「ちょっと待ってくださーいっ」


穂香「どうしたの?」


航太「穂香ちゃんって今、好きな人とか恋人とかいる?」


穂香は顔を真っ赤にして驚く。


穂香「えっ!?」


穂香(なんでこのタイミング??写真を撮ってくれる保護者の人に迷惑かかるよぉ。)


そう思いながらも、小さな声で俯き気味に言う。


穂香「いないよ……」


航太「良かった~。お土産買ってきたんだ。左手を出して?」


穂香「はぁ……?お土産……?チョコレートか何か……?」


穂香が手のひらを上に向けて手を差し出すと、航太が優しく包み込むように手を握る。


航太「すいません。写真を撮ってもらっていいですか?」


保護者の人「わかりました。いきますよ~」


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