甘い罠、秘密にキス
桜佑に見られていると思ったら余計に緊張する。奴の言った通りプレッシャーも半端ない。
でもこうなったら勝つしかない。自分から仕掛けたからには負けたくないし、桜佑の考える罰ゲームなんてきっとろくなものじゃないから。
「私が勝っても怒らないでよね」
「はいはい」
お金を入れ、転がってきたボールを手に取りすぐに構える。軽く深呼吸をして、集中しながら1本目を投げる。
「──わ!入った!」
びっくりした。まさか1本目から入るなんて思わなかったから、ボールがゴールリングをくぐった瞬間、思わず桜佑に視線を移して飛び跳ねた。
「私もやれば出来るじゃん!」
そう放った直後、桜佑がこちらに向けて構えていたスマホが、カチャッと音を立てたのが分かった。
「え、いま撮った?」
「よそ見してる暇あんのか?」
「あ、そうだった」
慌てて視線を戻し、ボールを持つ。今のでかなりタイムロスしてしまったため、急いでシュートを放つけど、案の定外れてしまった。
「ちょっと、恥ずかしいから写真撮らないでよ」
「無理。必死に投げてるお前、可愛いもん」
「………っ」
動揺して手元が狂ったのか、今度は大きく外れてしまう。そんな私を見て「集中しねえと勝てねえぞー」と声を掛けてくる桜佑を、横目でキッと睨んだ。
「狡い。そうやって私の集中力を途切れさせる作戦でしょ」
「俺はそんな小汚い男じゃねえ」
「どの口が言って……あ、また外れた」
やばい、このままだと完全に負ける。もう少しペースアップしなきゃ、得点が低すぎたら罰ゲームだけじゃなく一生いじられそうだ。
「もう話しかけないでね」
喋るのを止めて、一旦桜佑の存在を頭から消し、ゲームに集中することにした。
ゴールリングに視線を固定して、どんどんシュートを放っていく。
すると少しずつコツを掴んできたのか、かなりシュートが安定してきた。このままどんどん点数を稼いでやる──と、意気込んだ矢先、
「──ぃたっ」
指先をボールに突いてしまった。
「おい大丈夫か」
すかさず横から伸びてきた手が、痛めた方の手を取る。「見せて」と心配そうに私の手を見つめる桜佑に、さっきまでのふざけた空気はどこにもなかった。