甘い罠、秘密にキス

「…やば。ある意味しんどくなってきた」

「え、大丈夫?早くベッドで横になりなよ」

「……」


なぜか怪訝な目で私を一瞥した桜佑は「はいはい分かりましたよー」と不服そうに零しながら踵を返した。

ベッドに向かう後ろ姿は、やはり元気がなく若干ふらついているようにも見える。桜佑は大したことないって言っているけど、だいぶ無理しているのかも。


「よし、作るぞ」


桜佑の弱っている姿を見てやる気がみなぎってきた私は、さっそく腕捲りをしてキッチンに立つ。

そしてぐるりと辺りを見渡して改めて思ったのは、我が家のキッチンとは違い、調理器具や調味料がビッシリ揃っているということ。

桜佑はいつもここに立って料理をしているのだろうか。本当に彼の生活力には感心する。

でもあの仕事量で自炊する暇なんてあるのかな。それとも念の為揃えているだけで、全く使われていないとか?
実は他の女の人が作りに来てたりして。桜佑ってモテそうだもんな。それにここは社宅だし、同じ会社の人が来ても不思議ではないし……………でもそれって、浮気にならないの?

いや、いやいや。深く考えるのはやめよう。詮索は良くない。そもそも、桜佑が他の女の人と仲良くしてたって別に私には関係ないし。むしろ婚約解消出来るから好都合だし?

だから浮気とかそういう考えは………でも、なんかモヤモヤするな。

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