甘い罠、秘密にキス

「…桜佑……っ、ん、あっ…あぁ、」


私が返事をする前に突如律動を再開させた桜佑は、私の腰を掴み最奥ばかりを攻め立てる。息付く暇もなく襲ってくる快感に、目の前がチカチカした。

身体を弓なりに反らせ、シーツを握り締めながら、徐々に大きくなる波に耐えていると


「……伊織っ、」


桜佑が微かに顔を歪めながら奥を突いた瞬間、全身がビクビクと痙攣した。
そのまま覆い被さるように私を抱きしめた桜佑が、少し汗ばんだ私のこめかみにキスを落とす。


「…やば、気持ち良すぎて耐えられなかった…」

「……」

「あと1時間はいじめてやろうと思ったのに」


なんて怖いこと言うの。

ギョッとする私を見て悪戯っぽく笑った桜佑は、今度は私の唇にキスを落として「伊織が可愛すぎて困る」と小っ恥ずかしい台詞を呟く。

何か言い返してやろうと思ったけれど、そのままぎゅっと抱き締められ、その心地よさに力が抜けて、何も言葉が出てこなかった。


3時間とまではいかないけれど、恐らく1時間は繋がっていたと思う。私は案の定クタクタで、まだ肩で息をしているというのに、あと1時間だなんて一体どこにそんな体力が残っているのだろう。

体を離した桜佑に怪訝な目を向けると、彼は何故か優しく目を細める。そしてくしゃりと髪を撫でると、私の中から自身を引き抜いた。

意識が朦朧とする中、使用済みの避妊具を処理する様子をぼんやりと眺める。そのまま私の隣に戻ってくるのかと思いきや、すっと立ち上がった桜佑を見て、思わず「え」と声が漏れた。


「桜佑、どこ行くの?」

「どこって、すき焼きをあたためようかと」


まるで母親のような発言をする桜佑に、唖然としてしまう。私はすき焼きのことなんて、完全に忘れていたのに。


「お前腹減ってんだろ?」

「…まぁ、そうだけど…」

「どした?もう1回する?」

「…勘弁して」


もう少しくっついていたかった、なんて言えない。

すき焼きが食べたいなんて、言うんじゃなかったな。

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