甘い罠、秘密にキス
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パーティーは会社近くにあるホテルのパーティー会場で行われることになっている。
現地集合のため、川瀬さんと一緒に会場へ向かった。
着慣れない服のせいか、なんだか落ち着かない。妙にそわそわしてしまう。
「佐倉さん、表情が硬いですよ」
そう言う川瀬さんは、職業モデルですか?ってくらい堂々としている。まぁ、川瀬さんくらいビジュアルが整っていたら当たり前のことなのかもしれないけれど。
だって、自分で器用にアレンジしていたヘアスタイルも、淡い色のドレスも文句のつけどころがないくらい似合っていて、 またそのドレスから覗く脚も色が白く、おまけに細くて長い。
身に付けている小物類は全てトレンドをおさえているし、川瀬さんの隣にいれば私なんて霞んで見えるんじゃないかってくらい、誰もが一瞬で目を奪われる美しさだ。
けれど彼女の凄いところは、全く気取っていないところ。私が男なら、間違いなく惚れてる。
「受付を済ませたら中に入っていいみたいですよ」
「…もうみんな来てるかな」
「男性陣は会場準備があるので早くから来ているはずです。伊丹マネージャーは隠れて一服してそうですけどね」
会場の入口付近で受付をしている総務部の子のところへ行き、「お疲れ様です」と挨拶をしながら川瀬さんと並んで立つ。すると私達を捉えた彼女が目を丸くして固まった。
「営業部の川瀬と、こちらは佐倉さんです」
てっきり川瀬さんの美しさに圧倒されたのかと思ったけれど、説明するように言葉を紡いだ川瀬さんを見て、漸く察した。
どうやら受付の子は、私が“佐倉”だということに気付いていなかったらしい。
自分でもかなり変わったという自覚はあったけど、まさかここまでとは。
…なんだか、とてつもなく緊張してきた。桜佑はもう会場にいるのだろうか。
早く見て欲しいような、やっぱり見られたくないような、複雑な気持ちだ。