甘い罠、秘密にキス

「全部、嫉妬のせい…？」

「うん。多分、独占欲ってやつ」

「独占欲……」


嫉妬というものがどういうものなのか、今の私なら分かる。井上さんが桜佑を狙っていると勘違いしていた時、私も抱いた感情だからだ。

だからこれは全部、私を思っての言動。そして桜佑がこんな嘘を吐かなきゃいけなくなった原因は、きっと私にある。私が早く気持ちを伝えないから、あの桜佑が余裕をなくし、焦りを感じてしまったのだ。

それなのに私は勝手に暴走して、おまけにとんでもない台詞まで…。
この短期間で桜佑のいいところをたくさん見てきたはずなのに。私自身もたくさん支えてもらったのに。

私って、ほんとバカだ。


「ごめん、私…」

「あと、お前最近俺のこと避けてたろ。だから余計に焦ってたのもある」

「…え」

「明らかに様子がおかしいし、目を合わそうとしない。こないだ俺が誘った時も、結局山根のトラブルで会えないってなった瞬間、お前分かりやすくホッとした顔してた」


鋭い指摘に、ぎくりとした。身に覚えがあり過ぎて、返す言葉が見つからない。

腕の力を弱めた桜佑が、覗き込むようにして目を合わせてくる。その射抜くような視線に、思わず息を呑んだ。


「俺、なんか避けられるようなことした？気付かないうちにお前のこと傷付けた？」

「……」

「正直、もう愛想尽かされたのかと思った」

「…そんなわけないよ」


違う、愛想尽かすわけがない。むしろその反対だ。

まさか私の態度の変化に気付いているなんて思わなかった。私の軽率な行動が、どんどん桜佑を苦しめていってたなんて。


「…あのね、そうじゃなくて…」


もしかして、告白するなら今がチャンスなのかな。

たった今、桜佑が私の不安を取り除いてくれたように。
今度は私が、桜佑を安心させる番。