甘い罠、秘密にキス
11.真実にキス
会議、長引いてるな…。
ふと腕時計を確認すると、既に定時を30分過ぎていた。桜佑が会議室から出てくるのをずっと待っているけれど、まだ終わる気配がない。
桜佑と会う約束をしたのはいいのだけれど、告白のことで頭がいっぱいだった私は、時間や場所を決めるのをすっかり忘れていた。
会議中は連絡を取れないため、仕方なくオフィスで待っているのだけれど…遅くなるようなら、家でご飯でも作って待っていた方がよかっただろうか。
とか言って、料理のレパートリーは無いに等しいのだけど。
(桜佑のことが好きです…桜佑が好き…実は私も好きでした……)
自席で頬杖をつきながら、桜佑に伝える言葉を何度も何度も頭の中で確認する。もう何十分も前からイメトレを繰り返しているけれど、緊張のせいか指先は冷たいし、喉がカラカラだ。
本当は仕事をしながら待っているつもりだったけど、もうそれどころではない。全くといっていいほど仕事に集中出来ないため、気分転換に休憩スペースに行くことにした。
自販機の前に立ち、飲み物を選ぶ。ここはミネラルウォーターで喉を潤すべきなのか、それとも甘い飲み物で癒されるべきなのか。いや、ブラックコーヒーでスッキリさせるのも悪くないかも。
「うーん…」
「あれ、佐倉ちゃん残業?」
ふいに聞こえてきた声に、ビクッと大袈裟に肩が跳ねた。
弾かれたように振り返ると、そこに立っていたのは
「あ…藤さん。お疲れ様です」
今日も変わらず柔らかい笑みを浮かべた藤さんだった。