甘い罠、秘密にキス

「てか、謝りたいって言ったのも、結局は自分がスッキリしたかっただけなんだよな。ほんと何から何まで自分勝手でごめん」

「いいんです、もう謝らないでください。理由が分かっただけで充分。それに私も藤さんと同じだから…」

「同じ?」

「告白をOKした理由。恋をしたら、もう少し女性らしくなれるかなって思ったからなんです。軽い気持ちで頷くから、こんなことになるんですよね」


結局変わるどころか、余計に自信を失っただけだった。しかも社内恋愛のリスクすら考えていなかったのだから、本当に無知でバカなのだったと思う。

とか言って、また社内恋愛をしているわけだけど。


でも、藤さんの私に対する気持ちが、恋愛の好きじゃなかったと告白されたのに、傷付いていない自分がいる。それって結局、私も藤さんに恋をしていなかったということ。

だって、もし桜佑から言われたと思うと胸が苦しいもん。きっと立ち直れない。

それくらい、私はいま桜佑に恋をしている。


「てことは、佐倉ちゃんが変わった理由は、今度こそ本当の恋をしたからなんだね」

「…え?」

「恋をしたら変わるっていうのは、嘘じゃなかったんだ」


藤さんが優しく目を細めながら「その人とは、もう付き合ってるの?」と首を傾げる。


「付き…合ってるっていうのかは、よく分からないんですけど…まだ自分の気持ちを伝えられてなくて」

「えー、佐倉ちゃん意外と奥手なんだ?」

「そうみたいです。でも、今日こそ伝えようと思っていて」

「今日?!今からってこと?!うわ〜俺、大変な時に声掛けちゃったじゃん」

「いえ、全然大丈夫です。むしろ気が紛れたというか、今なら全力でぶつかれる気がします」

「全力でぶつかるって…佐倉ちゃんらしいな。いいな、俺もそういう相手が見つかったら、何か変わるかな」


独り言のように言葉を紡いだ藤さんは、困ったように笑いながら天を仰ぐ。


「大丈夫。藤さんの全てを包み込んでくれる人は、必ず現れますよ」


私を変えてくれたのは、あの男。桜佑が私の全てを包み込んで、背中を押してくれた。

だから藤さんにもそういう相手が現れたら、自然と自信に繋がって、周りの目なんて気にならなくなるくらい自分を好きになれるんじゃないかな。


どうしよう…こんなこと考えてたら、早く桜佑に会いたくなってきた。

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