甘い罠、秘密にキス

そもそも、お前を幸せに出来るのは俺しかいないってなんだ。どちらかというと不幸にさせてきた側なのに。

だからこれは絶対に罰ゲーム。この人は平然と嘘を吐く男なんだから。きっと高校からの数年間、桜佑から逃げ続けていたことをずっと根に持っていたんだ。

だからって、仕返しの内容が濃すぎやしませんか?だって…


「……あの、ひとつお伺いしたいことがあるのですが」

「なんだよ」

「私はどうしてこんな格好なのでしょう?昨晩、私達の間に何がありました?」

「そんなの、婚約者が同じベッドの上にいてやる事なんてひとつしかねえだろ」


ひとつしかないことないでしょ?!って言い返したいのに、セックスしましたよってハッキリ言われるのがこわくて聞けない。知りたくない。

罰ゲームのレベルが昔と違いすぎる…これならまだオスゴリラの方がマシだ。


「…どうしてもなかった事に出来ませんか」

「無理。いい加減諦めろ」

「ですよね」


最悪な事態だけど、こうなってしまったのには自分にも責任がある。それに今日から“婚約者”になったといっても、所詮私達の間で交わされた口約束だ。


「例えばだけど、どうすればこの婚約を解消出来る?」

「婚約してすぐにする話じゃねえだろ。縁起でもない」

「私達が婚約すること自体が縁起でもない話でしょ」


桜佑のことだ。2週間くらい経てばすぐに飽きるだろう。

だって桜佑と結婚どころか、手を繋ぐことすら想像出来ない。どうせ婚約者らしいことなんて何もしない。この男が私に甘い台詞を吐くなんて絶対に有り得ないし。


「だったらこうしよう。どちらかに先に好きな人が出来たら終わりってことで…」

「俺はお前が好きだけど」

「…っ、」


この男が私に甘い台詞を吐くなんて、絶対に有り得ないはずなんだけど?!

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