甘い罠、秘密にキス
桜佑がこてんと首を傾げながら腰を撫でるから、その官能的な手つきにぶわっと顔が熱くなった。「どうする?」と額をくっ付けてくる桜佑の色気が凄くて、頭から湯気が出そうだ。
「いや…でも…その…何も準備とか…」
「無理って言うならしねえけど、散々煽られて俺は結構限界なんですけど」
「煽っ…」
今にもキスしてしまいそうな距離に、息の仕方を忘れそうになる。このまま頷いたら、一体どうなってしまうんだろう。
急な展開に、完全に思考が停止している。桜佑に触れられているところに意識が集中して、何も考えられない。
数分前、キスを終えたあと、もう終わりなのかと寂しく感じたりしたけど、実際にこういう場面になると「やっぱ無理!」と心が叫びだす。
だってお風呂もまだだし、下着だってシンプルなやつだし、泣きすぎて目がパンパンだし、それに、それに…。
「伊織」
「……」
甘えるような声音で名前を呼ばれ、不覚にも胸がときめいてしまった。
心臓が激しく波打つ中、おずおずと大きな背中に手を回しながら視線を逸らす。俯き気味に「桜佑」と呼ぶと「ん?」と心地よい低音が鼓膜を揺らした。
「…絶対に、途中でやめたりしない?」
口をついて出た言葉に、桜佑は「当たり前」と優しく目を細める。
「むしろやめろって言われても続けるかも」
「それはそれで無理」
こんな時にふざけているのか、桜佑がクスクス笑い出すから、思わずじろりと睨んでしまう。けれど桜佑は「可愛い」と一言呟くと、そのまま私の唇を塞いだ。