甘い罠、秘密にキス
小さな胸なのに、桜佑はその大きな手で器用に包みこみ、ゆっくりと揉み始める。そうしながらも首筋に舌を這わせるから、びくんとちいさく身体が跳ねた。
「伊織、痕つけていい?」
──痕?
何のことか分からず首を傾げていると、返事をする前に鎖骨の下あたりにチクリと痛みが走った。
あ、キスマークのことだったのか。と冷静に考える隙もなく、今度は桜佑の指が胸の先端を優しく弾いて、不意をつかれた身体は再び大きく反応した。
「…んん…あっ、」
ビリビリと電流が走るような感覚に、思わず声が出る。
まるで自分のものじゃないような声にハッと我に返った私は、慌てて口を手で覆った。
「何してんだよ」
「…変な声出るから」
少し掠れた声は、甘さも可愛らしさもない。ただでさえ色気も何もないのに、声のせいで雰囲気をぶち壊しそうで怖くなる。
「…私の声、気持ち悪くない…?」
藤さんと途中までした時のことは、最後の記憶が強すぎて内容はあまり覚えていないけれど。とにかく感じているように見せなきゃって必死で、声を押し殺そうとはしなかった気がする。
でもそれも失敗だったのかなって、後になって後悔した。だって、どう考えてもこんな声を出すようなキャラじゃないから。
「伊織、また余計なこと考えてるだろ」
「……」
まるで私の頭の中を覗いているかのような桜佑の言葉に、思わず息を呑む。
「あのな、好きな女が感じてんのに気持ち悪いと思うわけねえだろ」
「…ぁっ…やっ、」
「いい加減俺のこと信じろよ、このバカ」
「ん、んんっ…」
「てか、いまあの男のこと思い出してんのかと思うとすげー腹立つ」
「…っ、…ごめ……」
「今は俺のことだけ考えとけ」
耳元で囁かれるその声は叱っているようだけど、私を包み込むように優しい。
そのまま耳にキスを落とされ、敏感な部分に触れる指先は激しさを増す。あっという間に何も考えられなくなるほどの快感が押し寄せてきて、耐えきれず甘い声が次々と溢れ出た。