甘い罠、秘密にキス
立て続けに襲ってくる快感に、息を整える暇もない。
「───っ、」
やがて大きな波がやってくると、身体がビクビクと痙攣し、声にならない声で絶頂に達した。
今まで感じたことのない感覚に、ガクンと一気力が抜ける。桜佑は、余韻でぴくぴくと震える私の身体にキスを落としながら「上手にイったな」と目を細めた。
初めて達した身体の疲労は、想像以上に大きかった。肩で息をする私を妖艶な笑みで見下ろす桜佑は、少し汗ばんだ私の額を撫でながら「伊織」と愛しそうに私の名前を紡いだ。
「悪い、俺全然余裕ねえわ」
どこが?と思ってしまうほど、桜佑には余裕しか感じない。はじめからずっと、私ばかりが翻弄されている。
けれど、密かに怪訝な目を向ける私を余所に、ちゅ、とリップ音を鳴らしながら短いキスを落とした桜佑は続けて口を開く。
「早く伊織と繋がりたい」
熱い視線に、どくんと心臓が跳ねる。男の人にこんなに求められるのは始めてだからか、胸がぎゅっと締め付けられる。
「拒絶しねえの?」
「……」
「止めるなら今しかないけど」
少し切なげに最終確認を取ってくる桜佑を、不覚にも愛しく思ってしまった。
ここにきても私を一番に考えてくれている。
それがただ嬉しくて、目頭がじんと熱くなった。
「……ないで…」
「うん?」
「やめないで……」
今にも消え入りそうな声で懇願すると、桜佑は返事の代わりに再び唇を塞いだ。
「優しくする」
──どの口が言ってんの。ふと昔の桜佑を思い出して、心の中で突っ込みを入れる。けれどそんなことを考えていられたのも、この時までだった。