結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
その13、伯爵令嬢と気がかり。
ベルとの「お付き合い」は、びっくりするほど穏やかだった。
かつてベルから、
『ルキ様は本当に婚約者に興味がないですね』
と言われた意味が今なら分かる。
知りたい、と思うだけでこうも意識が変わるのかと思うほど、今はベルの事ばかり考えている自分がいることにルキは素直に驚く。
「ルキ、何熱心に見てるの?」
「ん? ナジェリー王国の資料」
ナジェリー王国とは、今この国が友好を深めようとしている海の向こうの王国である。
この国と比べて規模自体は小さな国ではあるが、資源が豊かでナジェリー王国にしかない織物技術やシルク生地、質の高い宝石の原石が出る事で近年大変注目を浴びている。
だが、まだこの国には取引実績がない。随分と時間をかけて交渉を重ね、ようやく昨年ナジェリー国の王女様の来訪が決まった。
その王女様の来訪を来月末に控え、城内でもその準備に追われており、そのプロジェクトチームに当然ルキも入っている。
が、レインは不思議そうにルキの資料を見て、
「ルキの担当って交渉調整だけじゃなかった?」
と首を傾げる。
女性の相手を苦手とするルキは主に裏方担当で、交渉の場の設定や円滑に交流が進むようスケジュール調整などをメインで取り仕切っていた。
だというのに、今ルキが見ているのはナジェリー王国のマイナーな事業やあまり話題に上がってこないトピックスのまとめ情報。
正直裏方には必要のない情報で、今までのルキならおそらく話題にすら登らないそれらは資料を用意しざっと目を通す程度で、熟読まではしなかったはずだ。
「面白いなぁって。とくにこの廃石のリサイクル」
そう言って興味深そうに画像を見ていたルキは、宝石をカッティングする際に出た廃石を使い、工芸品を作る取り組みをしている記事をレインに見せる。
「へー一緒に来られる妹姫がやってる事業なんだ。あんまり有名じゃないから知らなかった」
記事を読みながら、レインはそう感想を述べる。
「注目されるのは価値ある宝石ばかりだからな」
勿論、この国としてもその宝石を輸入したいと思っているのだが。
「ベル好きそうだなって、こういう話題。"やばい、コレ絶対稼げる!!"って、廃石活用の企画書立てそう」
何せ彼女は紅茶の出涸らしですら様々なモノに活用してしまうのだ。こんな面白い素材を手に入れたら嬉々として色んな事を試し始めるだろう。
「何、ベル嬢のために見てたの?」
「友好関係築けたらそういうのも将来入って来るかもしれないだろ」
ベルならこれらにどんな価値を見出すだろう? そしてそれをどんな顔して語るんだろう? 楽しそうに語るベルの顔を思い浮かべたら、ルキは急にベルに会いたくなった。
「じゃあ当日の王城での歓迎会、ルキのパートナーとしてベル嬢連れて行ってあげたら?」
件のお姫様に会えるかもよ? とレインは揶揄うようにそう言うが、ルキは首を横に振る。
「ベルはまだ公爵家の人間じゃないからな。連れて行ったところで王族と謁見できる事はない」
ルキが何気なく言ったその言葉に驚いたようにレインは目を大きくする。
「それに俺、当日から王女様達帰国までガッツリ予定埋まってるんだよ」
レインが口を開くより早く、ルキがそう言ったので、
「どういう事?」
と別の言葉を発する事となった。
かつてベルから、
『ルキ様は本当に婚約者に興味がないですね』
と言われた意味が今なら分かる。
知りたい、と思うだけでこうも意識が変わるのかと思うほど、今はベルの事ばかり考えている自分がいることにルキは素直に驚く。
「ルキ、何熱心に見てるの?」
「ん? ナジェリー王国の資料」
ナジェリー王国とは、今この国が友好を深めようとしている海の向こうの王国である。
この国と比べて規模自体は小さな国ではあるが、資源が豊かでナジェリー王国にしかない織物技術やシルク生地、質の高い宝石の原石が出る事で近年大変注目を浴びている。
だが、まだこの国には取引実績がない。随分と時間をかけて交渉を重ね、ようやく昨年ナジェリー国の王女様の来訪が決まった。
その王女様の来訪を来月末に控え、城内でもその準備に追われており、そのプロジェクトチームに当然ルキも入っている。
が、レインは不思議そうにルキの資料を見て、
「ルキの担当って交渉調整だけじゃなかった?」
と首を傾げる。
女性の相手を苦手とするルキは主に裏方担当で、交渉の場の設定や円滑に交流が進むようスケジュール調整などをメインで取り仕切っていた。
だというのに、今ルキが見ているのはナジェリー王国のマイナーな事業やあまり話題に上がってこないトピックスのまとめ情報。
正直裏方には必要のない情報で、今までのルキならおそらく話題にすら登らないそれらは資料を用意しざっと目を通す程度で、熟読まではしなかったはずだ。
「面白いなぁって。とくにこの廃石のリサイクル」
そう言って興味深そうに画像を見ていたルキは、宝石をカッティングする際に出た廃石を使い、工芸品を作る取り組みをしている記事をレインに見せる。
「へー一緒に来られる妹姫がやってる事業なんだ。あんまり有名じゃないから知らなかった」
記事を読みながら、レインはそう感想を述べる。
「注目されるのは価値ある宝石ばかりだからな」
勿論、この国としてもその宝石を輸入したいと思っているのだが。
「ベル好きそうだなって、こういう話題。"やばい、コレ絶対稼げる!!"って、廃石活用の企画書立てそう」
何せ彼女は紅茶の出涸らしですら様々なモノに活用してしまうのだ。こんな面白い素材を手に入れたら嬉々として色んな事を試し始めるだろう。
「何、ベル嬢のために見てたの?」
「友好関係築けたらそういうのも将来入って来るかもしれないだろ」
ベルならこれらにどんな価値を見出すだろう? そしてそれをどんな顔して語るんだろう? 楽しそうに語るベルの顔を思い浮かべたら、ルキは急にベルに会いたくなった。
「じゃあ当日の王城での歓迎会、ルキのパートナーとしてベル嬢連れて行ってあげたら?」
件のお姫様に会えるかもよ? とレインは揶揄うようにそう言うが、ルキは首を横に振る。
「ベルはまだ公爵家の人間じゃないからな。連れて行ったところで王族と謁見できる事はない」
ルキが何気なく言ったその言葉に驚いたようにレインは目を大きくする。
「それに俺、当日から王女様達帰国までガッツリ予定埋まってるんだよ」
レインが口を開くより早く、ルキがそう言ったので、
「どういう事?」
と別の言葉を発する事となった。