結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
「あ、でもベルはやっぱりミルクティーで正解だね。ちょっとミルク濃いめにしてもらった」
あそこのベンチで飲もうかとベルにミルクティーの入ったカップを差し出す。
「先に帰ったんじゃ」
「帰らないよ、ベルの機嫌取ろうと思ってミルクティー買いに行っただけで」
ルキが持っている紙袋はベルの行きつけの喫茶店のモノで、きっと自分が紹介しなかったらルキが一生目に止めることのなかっただろう店。
ここから少し歩くその店に、わざわざ買いに行ってくれたらしい。
「ああ、そうだ。ベル、リストに追加していい? 仲直りの方法について考える」
「仲直り、したいんですか?」
「したい。あと本当にごめん」
仲直りしたい、と即答し真剣にこちらを見てくる濃紺の瞳を見たベルは、
「じゃあ、とりあえずこれ持って」
手に持っていた先程買ったものの入った紙袋をルキに渡す。
ルキが素直に持ったところで、
「手を、繋いでも?」
とベルは尋ねる。
「いい、けど」
躊躇いがちに差し出された手にベルは自分の手を乗せ、
「せっかくだから、今日はカップル繋ぎでもやってみる?」
イタズラでもするかのように楽しげに笑ってそう尋ねる。
もう怒ってなさそうだとほっとした表情を浮かべたルキと指を絡めてカップル繋ぎをしてみる。
「嫌なら、やめとこうか?」
尋ねられたルキはベルと繋いだ手に視線を落とす。
何度か手を繋いだ事はあるけれど、こんな繋ぎ方を誰かとするのは初めてで、少し気恥ずかしい。
だけど相手がベルだというだけで、嫌悪感は全くなくて、むしろ嬉しいとさえ思う。
「……ベル、困った」
「何?」
「このままだとコーヒー飲めない。俺の分冷めるんだけど」
「それが狙いだからね! 冷めたコーヒーも美味しいよ」
ふふっと笑ったベルはそのまま機嫌良さそうにミルクティーを飲みながら歩き出す。
「飲みながら歩くのは行儀悪いよ」
「私ルキと違っていい育ちじゃないもので。それに馬車に着くのが遅くなると夕食に間に合わないじゃない」
ミルクティーを飲んで表情を和らげたベルは、美味しいとつぶやく。
きっと今こんなにホッとして暖かい気持ちなのは、ルキがいるからだとベルは思う。
「私も、叩いてごめんなさい」
「まぁ、叩かれるだけの事を言ったから。ホントごめん」
隣を見ればしゅんとしているルキが目に入る。
もし彼が犬だったなら、耳も尻尾も垂れていそうだ。そんな想像をして、意外とルキに犬耳似合うななんて思ったベルはクスクス笑う。
「何?」
訝しげな視線が落ちて来て、ベルは優しく微笑むと、
「私、犬派なのよね。お兄様は猫派なんだけど」
楽しげにそう口にする。
「急に何の話?」
「大型犬に懐かれた話」
なお疑問符を浮かべるルキに、急がないと本当にコーヒー冷めるよとベルは楽しげに手を引いた。
あそこのベンチで飲もうかとベルにミルクティーの入ったカップを差し出す。
「先に帰ったんじゃ」
「帰らないよ、ベルの機嫌取ろうと思ってミルクティー買いに行っただけで」
ルキが持っている紙袋はベルの行きつけの喫茶店のモノで、きっと自分が紹介しなかったらルキが一生目に止めることのなかっただろう店。
ここから少し歩くその店に、わざわざ買いに行ってくれたらしい。
「ああ、そうだ。ベル、リストに追加していい? 仲直りの方法について考える」
「仲直り、したいんですか?」
「したい。あと本当にごめん」
仲直りしたい、と即答し真剣にこちらを見てくる濃紺の瞳を見たベルは、
「じゃあ、とりあえずこれ持って」
手に持っていた先程買ったものの入った紙袋をルキに渡す。
ルキが素直に持ったところで、
「手を、繋いでも?」
とベルは尋ねる。
「いい、けど」
躊躇いがちに差し出された手にベルは自分の手を乗せ、
「せっかくだから、今日はカップル繋ぎでもやってみる?」
イタズラでもするかのように楽しげに笑ってそう尋ねる。
もう怒ってなさそうだとほっとした表情を浮かべたルキと指を絡めてカップル繋ぎをしてみる。
「嫌なら、やめとこうか?」
尋ねられたルキはベルと繋いだ手に視線を落とす。
何度か手を繋いだ事はあるけれど、こんな繋ぎ方を誰かとするのは初めてで、少し気恥ずかしい。
だけど相手がベルだというだけで、嫌悪感は全くなくて、むしろ嬉しいとさえ思う。
「……ベル、困った」
「何?」
「このままだとコーヒー飲めない。俺の分冷めるんだけど」
「それが狙いだからね! 冷めたコーヒーも美味しいよ」
ふふっと笑ったベルはそのまま機嫌良さそうにミルクティーを飲みながら歩き出す。
「飲みながら歩くのは行儀悪いよ」
「私ルキと違っていい育ちじゃないもので。それに馬車に着くのが遅くなると夕食に間に合わないじゃない」
ミルクティーを飲んで表情を和らげたベルは、美味しいとつぶやく。
きっと今こんなにホッとして暖かい気持ちなのは、ルキがいるからだとベルは思う。
「私も、叩いてごめんなさい」
「まぁ、叩かれるだけの事を言ったから。ホントごめん」
隣を見ればしゅんとしているルキが目に入る。
もし彼が犬だったなら、耳も尻尾も垂れていそうだ。そんな想像をして、意外とルキに犬耳似合うななんて思ったベルはクスクス笑う。
「何?」
訝しげな視線が落ちて来て、ベルは優しく微笑むと、
「私、犬派なのよね。お兄様は猫派なんだけど」
楽しげにそう口にする。
「急に何の話?」
「大型犬に懐かれた話」
なお疑問符を浮かべるルキに、急がないと本当にコーヒー冷めるよとベルは楽しげに手を引いた。