結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
「は? ちょっと待って。もう婚約して9ヶ月、正式に届け出して半年だよ」
嘘だろと驚くルキに、
「だって、どうせ婚約破棄するじゃない。黙ってればバレないかなぁって。それにほら! 私だって公爵様にご挨拶してないし」
ベルは開き直ったようにそう話す。
確かに見合い前後も、正式に婚約の届けをした後も父であるブルーノ公爵とベルは一度も接触していない。もともとブルーノ公爵が領地に移ってから、王都での公爵の名代は全てルキが行なっており、ルキの父が王都まで出てくることは滅多にない。
ベルとの見合いも祖父や父からの命令に近い形で勧められたものだから、どうせ反対されることもないだろうと婚約する際も書面でそっけなく報告した程度だ。
お互い相手に親を直接紹介する機会がなかったといえば確かにそうなのだが、
「……本当に隠し通す気だったの?」
せめて報告くらいはしておいて欲しかったとルキは切実に思う。
婚約者だと伝わってすらいない男の同伴をよく許したなとストラル伯爵領への訪問が一気に不安になる。
「だって、お義母様には婚約破棄予定の契約婚約中だなんて知られたくないし」
そう言ったベルは、両手をパチンと合わせてルキを拝み、
「お願い、お義母様には黙ってて。お兄様の友達とか、仕事関係での領地見学とか、なんか上手い具合に誤魔化すから」
と頼む。
「いや、駄目でしょ」
即時却下したルキに、
「だって、3ヶ月後に婚約破棄とかお義母様絶対がっかりする。恋人だっていた事ないもん。紹介してすぐお別れします、なんて言えないよ」
ベルは懇願するように食い下がる。
まぁ確かに常識的に考えて契約婚約なんてよろしくないし、わずか数ヶ月で破局予定の恋人など親に紹介するものではないだろう。
「お義母さまに余計な心配かけたくないの。お願い」
必死でそう言うベルに、
「ベルに、一般的な感覚がある事がすごく新鮮」
普段の貴族令嬢らしからぬベルの言動を思い出し、ルキはクスッと笑った。
「失礼な、私の事なんだと思ってるの?」
「世界最強のメンタルを持つ令嬢」
誰が世界最高峰のメンタルだとちょっとイラッとしたように眉を寄せたベルは、
「……豆腐メンタルのくせに」
ぼそっとつぶやく。
「バラすよ?」
「すみません、お願いします、内緒の方向で!」
畳み掛けるように頼み込むベルにそんなに俺の事紹介するのは嫌なのかよとちょっと複雑な気持ちになったルキは、
「じゃあ、黙っている代わりにベルは何かしてくれるの?」
と意地悪を言ってみる。
真剣に熟考したベルは、
「じゃあ、ルキが欲しいものを可能な限り何でも1個用意するよ」
と提案する。
「なんでも?」
「すぐに用意できないモノもあると思うけど」
可能な限りリクエストに応じるからと再度お願いするベルにルキは折れた。
嘘だろと驚くルキに、
「だって、どうせ婚約破棄するじゃない。黙ってればバレないかなぁって。それにほら! 私だって公爵様にご挨拶してないし」
ベルは開き直ったようにそう話す。
確かに見合い前後も、正式に婚約の届けをした後も父であるブルーノ公爵とベルは一度も接触していない。もともとブルーノ公爵が領地に移ってから、王都での公爵の名代は全てルキが行なっており、ルキの父が王都まで出てくることは滅多にない。
ベルとの見合いも祖父や父からの命令に近い形で勧められたものだから、どうせ反対されることもないだろうと婚約する際も書面でそっけなく報告した程度だ。
お互い相手に親を直接紹介する機会がなかったといえば確かにそうなのだが、
「……本当に隠し通す気だったの?」
せめて報告くらいはしておいて欲しかったとルキは切実に思う。
婚約者だと伝わってすらいない男の同伴をよく許したなとストラル伯爵領への訪問が一気に不安になる。
「だって、お義母様には婚約破棄予定の契約婚約中だなんて知られたくないし」
そう言ったベルは、両手をパチンと合わせてルキを拝み、
「お願い、お義母様には黙ってて。お兄様の友達とか、仕事関係での領地見学とか、なんか上手い具合に誤魔化すから」
と頼む。
「いや、駄目でしょ」
即時却下したルキに、
「だって、3ヶ月後に婚約破棄とかお義母様絶対がっかりする。恋人だっていた事ないもん。紹介してすぐお別れします、なんて言えないよ」
ベルは懇願するように食い下がる。
まぁ確かに常識的に考えて契約婚約なんてよろしくないし、わずか数ヶ月で破局予定の恋人など親に紹介するものではないだろう。
「お義母さまに余計な心配かけたくないの。お願い」
必死でそう言うベルに、
「ベルに、一般的な感覚がある事がすごく新鮮」
普段の貴族令嬢らしからぬベルの言動を思い出し、ルキはクスッと笑った。
「失礼な、私の事なんだと思ってるの?」
「世界最強のメンタルを持つ令嬢」
誰が世界最高峰のメンタルだとちょっとイラッとしたように眉を寄せたベルは、
「……豆腐メンタルのくせに」
ぼそっとつぶやく。
「バラすよ?」
「すみません、お願いします、内緒の方向で!」
畳み掛けるように頼み込むベルにそんなに俺の事紹介するのは嫌なのかよとちょっと複雑な気持ちになったルキは、
「じゃあ、黙っている代わりにベルは何かしてくれるの?」
と意地悪を言ってみる。
真剣に熟考したベルは、
「じゃあ、ルキが欲しいものを可能な限り何でも1個用意するよ」
と提案する。
「なんでも?」
「すぐに用意できないモノもあると思うけど」
可能な限りリクエストに応じるからと再度お願いするベルにルキは折れた。