結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
「なんか、話したら結構スッキリしちゃった。ありがとう、聞いてくれて」
そう言ってコチラを見るアクアマリンの瞳はいつも通り楽しげで、話し始めた時のような落ち込みは見受けられない。
「なんっていうか、こう……ベルって小さい頃からベルだよね」
苦笑気味にルキはそう感想を漏らす。
「いや、まぁこれが私ですから」
ふふっと楽しそうに声をあげて空を見上げるベルは、
「今日は、月がすごくキレイだね」
そういえばルキとこんな遅くに夜外にいた事ないなと思いながらベルはそう口にする。
そんなベルを苦笑しながらじっと見つめたルキは、風に靡く彼女の髪を捕まえて、ベルの耳にかけながら優しく微笑む。
「ベルには、いつも感謝してる」
話してくれてありがとうと静かにそう言った。
「ストラル領についてきて良かったな、と思ってる。ベルの事も知れたし」
自分の気持ちも理解できたし、とルキは心の中でそう付け足す。
「そう? さして面白い話でもなかったでしょうけど」
「ベルは、小さな時から今と変わらず家族思いで、優しくて、逞しくて、努力家なんだなって知れてよかった」
苦くて苦しい経験も悲しい経験もして、それでもベルは自分にできる精一杯を考えて前を向く。
たくさんの出来事が絡み合い、今こうして彼女が隣にいる縁を無くしたくない、とルキは強く思う。
ルキは手を差し出して、
「ベル、もう少しの間だけ俺と恋人ごっこ続けてくれる?」
ベルにそう尋ねる。
「それは、もちろんあと3ヶ月あるからそれまで続けるけど」
差し出された手を握り、握手を交わしながら、
「ルキ、お願いがあるの」
とベルは申し出る。
「何?」
「シル様に契約婚約の事を伝えてはダメかしら? お別れの準備をする時間が欲しい」
まるで本当の姉のように慕ってくれ、いつかルキと自分が結婚するのだと信じて疑わないシルヴィアにこれ以上黙っているのは心苦しいかった。
ルキが正式に妻を迎える時の事を考えても、シルヴィアをこのままにはしておけないとベルは思う。
「……シルには俺から話すから、もう少し待っててくれる?」
「分かった。ありがとう」
ベルはほっとしたように、ふわっと微笑む。そんな彼女を見ながら、ベルはもう別れる準備を始めているのだとルキは悟る。
終わりがあるのは理解している。でも、契約婚約が終わっても、ベルに側にいて欲しい。
だからベルにこの先も一緒にいたいと選んでもらえる努力をしようとルキは決める。
「ところでベル、知ってる? "月がきれいだね"って意味」
ルキは握手をしていた手を取り直し、ベルの手を改めて取る。
「またわけのわからない貴族語?」
まどろっこしいんだけど、と訝しげに眉を寄せるベルを見ながら、
「"キスがしたい"って意味だから、他所で言わないでね。あと他の男に言われたら全力で逃げてね」
「推察できる要素が1ミリもないんだけど!?」
先程自分が言った言葉を思い出し、他意は本当にないから! と全力で否定するベルを見て、ルキは知ってると苦笑する。
「だから、時々すっごく無防備だって言ってるでしょ」
「知らないわよ。貴族語想像力豊か過ぎない!?」
うぅと唸ったベルを見ながらルキはクスッと笑う。
「ねぇ、ベル。月がきれいだね」
そう言った自分を見て驚いたように丸くなったアクアマリンの瞳を見ながら、ルキはベルの手の甲に口付けた。
そう言ってコチラを見るアクアマリンの瞳はいつも通り楽しげで、話し始めた時のような落ち込みは見受けられない。
「なんっていうか、こう……ベルって小さい頃からベルだよね」
苦笑気味にルキはそう感想を漏らす。
「いや、まぁこれが私ですから」
ふふっと楽しそうに声をあげて空を見上げるベルは、
「今日は、月がすごくキレイだね」
そういえばルキとこんな遅くに夜外にいた事ないなと思いながらベルはそう口にする。
そんなベルを苦笑しながらじっと見つめたルキは、風に靡く彼女の髪を捕まえて、ベルの耳にかけながら優しく微笑む。
「ベルには、いつも感謝してる」
話してくれてありがとうと静かにそう言った。
「ストラル領についてきて良かったな、と思ってる。ベルの事も知れたし」
自分の気持ちも理解できたし、とルキは心の中でそう付け足す。
「そう? さして面白い話でもなかったでしょうけど」
「ベルは、小さな時から今と変わらず家族思いで、優しくて、逞しくて、努力家なんだなって知れてよかった」
苦くて苦しい経験も悲しい経験もして、それでもベルは自分にできる精一杯を考えて前を向く。
たくさんの出来事が絡み合い、今こうして彼女が隣にいる縁を無くしたくない、とルキは強く思う。
ルキは手を差し出して、
「ベル、もう少しの間だけ俺と恋人ごっこ続けてくれる?」
ベルにそう尋ねる。
「それは、もちろんあと3ヶ月あるからそれまで続けるけど」
差し出された手を握り、握手を交わしながら、
「ルキ、お願いがあるの」
とベルは申し出る。
「何?」
「シル様に契約婚約の事を伝えてはダメかしら? お別れの準備をする時間が欲しい」
まるで本当の姉のように慕ってくれ、いつかルキと自分が結婚するのだと信じて疑わないシルヴィアにこれ以上黙っているのは心苦しいかった。
ルキが正式に妻を迎える時の事を考えても、シルヴィアをこのままにはしておけないとベルは思う。
「……シルには俺から話すから、もう少し待っててくれる?」
「分かった。ありがとう」
ベルはほっとしたように、ふわっと微笑む。そんな彼女を見ながら、ベルはもう別れる準備を始めているのだとルキは悟る。
終わりがあるのは理解している。でも、契約婚約が終わっても、ベルに側にいて欲しい。
だからベルにこの先も一緒にいたいと選んでもらえる努力をしようとルキは決める。
「ところでベル、知ってる? "月がきれいだね"って意味」
ルキは握手をしていた手を取り直し、ベルの手を改めて取る。
「またわけのわからない貴族語?」
まどろっこしいんだけど、と訝しげに眉を寄せるベルを見ながら、
「"キスがしたい"って意味だから、他所で言わないでね。あと他の男に言われたら全力で逃げてね」
「推察できる要素が1ミリもないんだけど!?」
先程自分が言った言葉を思い出し、他意は本当にないから! と全力で否定するベルを見て、ルキは知ってると苦笑する。
「だから、時々すっごく無防備だって言ってるでしょ」
「知らないわよ。貴族語想像力豊か過ぎない!?」
うぅと唸ったベルを見ながらルキはクスッと笑う。
「ねぇ、ベル。月がきれいだね」
そう言った自分を見て驚いたように丸くなったアクアマリンの瞳を見ながら、ルキはベルの手の甲に口付けた。