結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
嫌がる御者を金貨で買収してシルヴィアが向かったのはストラル伯爵家だった。アポ無しの突撃訪問。
怒られたらその時は潔く謝ろうそう思っていたシルヴィアを出迎えてくれたのは銀色の髪に金の目をしたお腹の膨らみの目立つ綺麗な女性だった。
「あなたがシルヴィアお嬢様ですね」
ベルさんがお世話になっていますと微笑んだ伯爵夫人はにこやかに笑ってミルクティーを出してくれた。
なんと言えばいいのかわからず黙ってしまったシルヴィアのことを猫のような金色の目でじっと見たベロニカは、何かを察したように大丈夫ですよと微笑んでくれた。
ベロニカの雰囲気とベルが似ている気がして、気が緩んだシルヴィアはミルクティーを飲みながら泣いてしまった。
大丈夫、大丈夫と泣き止むまで背をさすってくれたベロニカはシルヴィアが落ち着いたタイミングで、じゃあ行きましょうか? とシルヴィアの手を引いた。
そのまま連れて来られたのはベルが働くストラル社の建物で、連絡を受けていたらしいベルが出迎えてくれて今に至る。
「私ったらご挨拶もせずに申し訳ありません。ストラル伯爵夫妻に初めてお目にかかります。私、ブルーノ公爵家長女のシルヴィア・ブルーノと申し上げます」
我に返ったシルヴィアはそう言って流れるような綺麗な所作でカ-テシーをしてみせる。
「君の事はベルから聞いて知っている。こちらこそ挨拶が遅れてすまない」
ベルとは全然似ていない伯爵はシルヴィアとベロニカに視線を流したあと、ふむと頷いて、
「ベル、お前今日午後休にするから、まず屋敷に連絡。お嬢様とお屋敷に必ず一緒に帰る事」
そう業務命令を出すと、このあと会議だからと足早に去って行った。
「やったー社長命令の午後休! シル様何して遊びます?」
ガッツポーズでそう叫ぶベルに、
「えーずるいです、ベルさん! 私もシルさんと遊びたい」
可愛い可愛いとシルヴィアを愛でるベロニカは、ハイハイっと両手を上げて全力で主張する。
「……ベル、怒ってないの?」
「何か怒られるような事をしたのですか?」
「私、勝手にお屋敷を抜け出したわ。それにベルのお仕事の邪魔もして、お屋敷のみんなにもたくさん、当たって……迷惑かけて……」
しゅんと話すシルヴィアの髪を優しく撫でたベルは、
「んーなるほど。じゃ、後で一緒に叱られましょう。でも今帰ったら叱られ損です。どうせ怒られるなら目一杯遊んでから叱られましょう」
と提案する。
「ベルさんの言う通りです。というわけでシルさん、お腹空いてませんか? とりあえずうどんを作りましょう!」
お腹が空くとイライラするんですよとベロニカはどこからか取り出した小麦粉を見せる。
「さすがお義姉様! うどんいい!! 私調理室借りて来ます」
パチンと手を叩いたベルは、お腹空いたーと叫ぶと鼻歌交じりに楽しげに駆けて行った。
怒られたらその時は潔く謝ろうそう思っていたシルヴィアを出迎えてくれたのは銀色の髪に金の目をしたお腹の膨らみの目立つ綺麗な女性だった。
「あなたがシルヴィアお嬢様ですね」
ベルさんがお世話になっていますと微笑んだ伯爵夫人はにこやかに笑ってミルクティーを出してくれた。
なんと言えばいいのかわからず黙ってしまったシルヴィアのことを猫のような金色の目でじっと見たベロニカは、何かを察したように大丈夫ですよと微笑んでくれた。
ベロニカの雰囲気とベルが似ている気がして、気が緩んだシルヴィアはミルクティーを飲みながら泣いてしまった。
大丈夫、大丈夫と泣き止むまで背をさすってくれたベロニカはシルヴィアが落ち着いたタイミングで、じゃあ行きましょうか? とシルヴィアの手を引いた。
そのまま連れて来られたのはベルが働くストラル社の建物で、連絡を受けていたらしいベルが出迎えてくれて今に至る。
「私ったらご挨拶もせずに申し訳ありません。ストラル伯爵夫妻に初めてお目にかかります。私、ブルーノ公爵家長女のシルヴィア・ブルーノと申し上げます」
我に返ったシルヴィアはそう言って流れるような綺麗な所作でカ-テシーをしてみせる。
「君の事はベルから聞いて知っている。こちらこそ挨拶が遅れてすまない」
ベルとは全然似ていない伯爵はシルヴィアとベロニカに視線を流したあと、ふむと頷いて、
「ベル、お前今日午後休にするから、まず屋敷に連絡。お嬢様とお屋敷に必ず一緒に帰る事」
そう業務命令を出すと、このあと会議だからと足早に去って行った。
「やったー社長命令の午後休! シル様何して遊びます?」
ガッツポーズでそう叫ぶベルに、
「えーずるいです、ベルさん! 私もシルさんと遊びたい」
可愛い可愛いとシルヴィアを愛でるベロニカは、ハイハイっと両手を上げて全力で主張する。
「……ベル、怒ってないの?」
「何か怒られるような事をしたのですか?」
「私、勝手にお屋敷を抜け出したわ。それにベルのお仕事の邪魔もして、お屋敷のみんなにもたくさん、当たって……迷惑かけて……」
しゅんと話すシルヴィアの髪を優しく撫でたベルは、
「んーなるほど。じゃ、後で一緒に叱られましょう。でも今帰ったら叱られ損です。どうせ怒られるなら目一杯遊んでから叱られましょう」
と提案する。
「ベルさんの言う通りです。というわけでシルさん、お腹空いてませんか? とりあえずうどんを作りましょう!」
お腹が空くとイライラするんですよとベロニカはどこからか取り出した小麦粉を見せる。
「さすがお義姉様! うどんいい!! 私調理室借りて来ます」
パチンと手を叩いたベルは、お腹空いたーと叫ぶと鼻歌交じりに楽しげに駆けて行った。