結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
トントントンっとノックがしたが、その後のアクションがない。不思議に思ってドアを開けると廊下に座り込んでいるルキを見つけた。
「ちょっと、ルキどうしたの? 今日は向こうに泊まりなんじゃ」
慌てて駆け寄ったベルはルキの顔色を確認する。
「……ベル、すごい気持ち……悪い」
夜会ではアルコールを口にしないルキが珍しく酔っている。そしてルキはアルコール耐性が低い方ではない。
「何か、慣れないモノ飲まされたの?」
コクンと頷くルキの背をさすりため息をついたベルは、
「とりあえずお手洗いに連れて行くか」
ミネラルウォーターを手に取りそう言った。
ルキはパチっと目を覚ますと薄暗い部屋とベッドにいる状況に焦るが、
「目が覚めたのね、具合は?」
タイミング良く入って来た聞き覚えのある声に心底安堵した。
パチリと部屋の明かりをつけたベルはルキの顔色を確認し、
「一通り吐かせたし、水分摂らせてから寝かせたけど、気分は? 薬飲める?」
と静かに尋ねる。
ルキのぼんやりしていた頭が急速に回転し始め、両手で顔を覆う。
夜会を乗り切って安堵したところで上司からアルコールを盛られ、その娘のカロリーナをはじめとした令嬢達に絡まれ、隙を見て会場を抜け出し、なんとか家まで帰って、気づけばベルの部屋に来ていた。
「……夜中に本当、ごめん」
「いや、まぁ、どこぞのご令嬢にお持ち帰りされる事なく無事に帰って来て良かったよ」
よしよしと慰めるように頭を撫でてくれるベルを見て、
「最近平和過ぎて油断してた。俺もうベルのいない夜会無理かも」
久しぶりに怖かったと泣きそうな顔でそう言った。
「次期公爵が情けないこと言わないの」
お仕事でしょと苦笑しつつ、婚約者がいても大変なルキが風除けなしで乗り切ったのだからここは目一杯褒めるべきなのだろうと頭を撫でながら労いの言葉をかけた。
「朝一でお医者様呼ぼうか?」
変な薬でも盛られていたら困るしとベルが心配そうに提案するが、
「んー平気そう」
随分楽になった身体を確かめてルキは大丈夫と返事した。
時計を見やれば真夜中を過ぎており、ベルに多大な迷惑をかけたことを知る。こんな状態になっても一番に頼る相手がベルなのだから、彼女がいなかった頃はどうやってコレを乗り越えていたのか、もはや思い出せない。
「とりあえず温かいお茶でも飲もうか」
ベッドサイドでお茶の準備してくれるベルのチョコレートブラウンの髪を軽くひき、
「ベル、ありがとう」
とルキは静かにそう言った。
「どういたしまして」
私の婚約者殿はホントに手がかかるわと揶揄うようにクスクス笑うベルを見ながら、ルキはやっぱり彼女の側が一番ホッとすると笑った。
「ちょっと、ルキどうしたの? 今日は向こうに泊まりなんじゃ」
慌てて駆け寄ったベルはルキの顔色を確認する。
「……ベル、すごい気持ち……悪い」
夜会ではアルコールを口にしないルキが珍しく酔っている。そしてルキはアルコール耐性が低い方ではない。
「何か、慣れないモノ飲まされたの?」
コクンと頷くルキの背をさすりため息をついたベルは、
「とりあえずお手洗いに連れて行くか」
ミネラルウォーターを手に取りそう言った。
ルキはパチっと目を覚ますと薄暗い部屋とベッドにいる状況に焦るが、
「目が覚めたのね、具合は?」
タイミング良く入って来た聞き覚えのある声に心底安堵した。
パチリと部屋の明かりをつけたベルはルキの顔色を確認し、
「一通り吐かせたし、水分摂らせてから寝かせたけど、気分は? 薬飲める?」
と静かに尋ねる。
ルキのぼんやりしていた頭が急速に回転し始め、両手で顔を覆う。
夜会を乗り切って安堵したところで上司からアルコールを盛られ、その娘のカロリーナをはじめとした令嬢達に絡まれ、隙を見て会場を抜け出し、なんとか家まで帰って、気づけばベルの部屋に来ていた。
「……夜中に本当、ごめん」
「いや、まぁ、どこぞのご令嬢にお持ち帰りされる事なく無事に帰って来て良かったよ」
よしよしと慰めるように頭を撫でてくれるベルを見て、
「最近平和過ぎて油断してた。俺もうベルのいない夜会無理かも」
久しぶりに怖かったと泣きそうな顔でそう言った。
「次期公爵が情けないこと言わないの」
お仕事でしょと苦笑しつつ、婚約者がいても大変なルキが風除けなしで乗り切ったのだからここは目一杯褒めるべきなのだろうと頭を撫でながら労いの言葉をかけた。
「朝一でお医者様呼ぼうか?」
変な薬でも盛られていたら困るしとベルが心配そうに提案するが、
「んー平気そう」
随分楽になった身体を確かめてルキは大丈夫と返事した。
時計を見やれば真夜中を過ぎており、ベルに多大な迷惑をかけたことを知る。こんな状態になっても一番に頼る相手がベルなのだから、彼女がいなかった頃はどうやってコレを乗り越えていたのか、もはや思い出せない。
「とりあえず温かいお茶でも飲もうか」
ベッドサイドでお茶の準備してくれるベルのチョコレートブラウンの髪を軽くひき、
「ベル、ありがとう」
とルキは静かにそう言った。
「どういたしまして」
私の婚約者殿はホントに手がかかるわと揶揄うようにクスクス笑うベルを見ながら、ルキはやっぱり彼女の側が一番ホッとすると笑った。