結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
「夜会はどうだったの?」
「滞りなく。シルの事もありがとう」
夜会は大盛況だった。遠くからしか見られなかったシルヴィアは公爵令嬢らしく堂々としていて、あんなに小さかったシルヴィアがと感慨深く思っていた。
「私は何もしてないよ。でも目一杯褒めてあげてね。シル様沢山頑張ってきたみたいだし」
帰宅して満足気にココアを飲んでいたシルヴィアを思い出し、ベルは微笑ましそうに笑う。
「そうだね。シルも労ってあげよう」
ルキはそう言って頷き、ベルの事をじっと見つめる。
「どうしたの?」
「すごく久しぶりに会う気がして。エステル王女とベルの話ばかりしてたから会いたかったなぁって」
「ちょ、お姫様相手に何話してるの!?」
会いたかったとストレートに言われ、飲んでいたお茶にむせそうになったベルは、アクアマリンの瞳を丸くしてそう抗議する。
「好きな人のタイプ聞かれたから、石窯手作りでプレゼントしてくれる無人島でも楽しく生き残れそうな人って話しただけ」
「…………本当に、何を話しているのよ」
知らないところで変なレッテルを貼らないで欲しいとベルは顔を覆う。
王族なんて生涯お目にかかる事もないだろうが、それでも勘弁して欲しい。
「そりゃあね、私はルキの風除けだけども、言い方ってものが」
「"好きな人"の部分は無視なの?」
じっと濃紺の瞳に見つめられ、近い距離で視線が絡みベルは言葉を失くす。
「ベル。俺は今の仕事が落ち着いたら、契約婚約も恋人ごっこも解除したいと思ってる」
驚いているアクアマリンの瞳を優しく見つめ、ルキははっきりそう告げる。
「好きな人ができたから。その人のいない人生を考えられないくらい、大事な人が」
ルキはベルの手を取るとそこにそっとキスを落とす。
「あのね、ルキ。私、は」
この『お付き合い』はあくまで彼が"愛してる"を見つけるための割り切った関係だ。
次期公爵であるルキと自分とではこの先の関係は望めない。
もし、ルキが自分を望んでくれたとしても、いずれ公爵として責任を担わなければならない彼に見合うだけのものを自分は持っていないのだ。
それどころか貴族の庶子など上流階級の人間と渡り合うにはマイナスにしかならない。
そう言おうとしたベルを抱きしめて、
「俺告白すらしてないんだから、まだ何も言わないで。今、準備してる最中だから」
そう言ったルキの声が微かに震えていて、ベルは言葉を紡げなくなる。
ルキが自分に対しての好意をはっきり示すようになったのは、ストラル領から帰って来てからだった。
夜会の場でエスコートする時も、ただこうやって2人で過ごす時も、ルキの濃紺の瞳には熱っぽさが宿っているし、時折り手の甲や髪にキスを落とすようになった。
ルキが気軽にそんな事ができるタイプではないと知っているから、ルキにとってそんな風に触れたい対象になったのだとベルは認めざるを得なかった。
そしてルキに触れられるのが、嫌ではないのだ。困ったことに、とベルは内心で静かに苦笑する。
「……分かったから、今日はもう寝ちゃいなさい」
抱きしめ返して背中をトントンと叩き、ベッドに戻るように促すと素直に従ったルキは横になってあっという間に眠りに落ちた。
「滞りなく。シルの事もありがとう」
夜会は大盛況だった。遠くからしか見られなかったシルヴィアは公爵令嬢らしく堂々としていて、あんなに小さかったシルヴィアがと感慨深く思っていた。
「私は何もしてないよ。でも目一杯褒めてあげてね。シル様沢山頑張ってきたみたいだし」
帰宅して満足気にココアを飲んでいたシルヴィアを思い出し、ベルは微笑ましそうに笑う。
「そうだね。シルも労ってあげよう」
ルキはそう言って頷き、ベルの事をじっと見つめる。
「どうしたの?」
「すごく久しぶりに会う気がして。エステル王女とベルの話ばかりしてたから会いたかったなぁって」
「ちょ、お姫様相手に何話してるの!?」
会いたかったとストレートに言われ、飲んでいたお茶にむせそうになったベルは、アクアマリンの瞳を丸くしてそう抗議する。
「好きな人のタイプ聞かれたから、石窯手作りでプレゼントしてくれる無人島でも楽しく生き残れそうな人って話しただけ」
「…………本当に、何を話しているのよ」
知らないところで変なレッテルを貼らないで欲しいとベルは顔を覆う。
王族なんて生涯お目にかかる事もないだろうが、それでも勘弁して欲しい。
「そりゃあね、私はルキの風除けだけども、言い方ってものが」
「"好きな人"の部分は無視なの?」
じっと濃紺の瞳に見つめられ、近い距離で視線が絡みベルは言葉を失くす。
「ベル。俺は今の仕事が落ち着いたら、契約婚約も恋人ごっこも解除したいと思ってる」
驚いているアクアマリンの瞳を優しく見つめ、ルキははっきりそう告げる。
「好きな人ができたから。その人のいない人生を考えられないくらい、大事な人が」
ルキはベルの手を取るとそこにそっとキスを落とす。
「あのね、ルキ。私、は」
この『お付き合い』はあくまで彼が"愛してる"を見つけるための割り切った関係だ。
次期公爵であるルキと自分とではこの先の関係は望めない。
もし、ルキが自分を望んでくれたとしても、いずれ公爵として責任を担わなければならない彼に見合うだけのものを自分は持っていないのだ。
それどころか貴族の庶子など上流階級の人間と渡り合うにはマイナスにしかならない。
そう言おうとしたベルを抱きしめて、
「俺告白すらしてないんだから、まだ何も言わないで。今、準備してる最中だから」
そう言ったルキの声が微かに震えていて、ベルは言葉を紡げなくなる。
ルキが自分に対しての好意をはっきり示すようになったのは、ストラル領から帰って来てからだった。
夜会の場でエスコートする時も、ただこうやって2人で過ごす時も、ルキの濃紺の瞳には熱っぽさが宿っているし、時折り手の甲や髪にキスを落とすようになった。
ルキが気軽にそんな事ができるタイプではないと知っているから、ルキにとってそんな風に触れたい対象になったのだとベルは認めざるを得なかった。
そしてルキに触れられるのが、嫌ではないのだ。困ったことに、とベルは内心で静かに苦笑する。
「……分かったから、今日はもう寝ちゃいなさい」
抱きしめ返して背中をトントンと叩き、ベッドに戻るように促すと素直に従ったルキは横になってあっという間に眠りに落ちた。