結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
パタパタパタパタと軽い足音を立て、仕事上がりのベルを出迎えたシルヴィアは、興奮気味にベルに手紙を見せる。
「どうしましょう、ベル! お父様からお食事のお誘いを頂いてしまったわ」
「良かったですね、シル様」
きっと夜会でのシル様のご様子を見て、考えを改められたのでしょうとベルはにこやかに笑う。
「今までこんなことなかったのに、どうしよう。何を着て行って、どんな話をすればいいのかしら?」
ワタワタと慌てるシルヴィアの髪を優しく撫でたベルは、
「そのままのシル様で大丈夫ですよ。シル様のとっておきのドレスを着て、おめかししましょう。きっと公爵様はシル様の最近のご様子やお好きなものなどを知りたいでしょうから、ゆっくりお話しを楽しまれてはいかがでしょうか?」
そうシルヴィアに助言をする。
「私も、お父様のこと全然知らないわ。何がお好きなのかしら?」
「では、シル様の知りたい事もぜひ聞いてみてください。きっと次に繋がるきっかけになるはずですよ」
ベルにそう言われ、そうよねとシルヴィアは嬉しそうに頷く。
「ねぇ、ベル。もし、良ければベルも一緒に」
「せっかくの親子水入らずを邪魔するわけにはいきませんよ。シル様なら、私などいなくても大丈夫です。夜会だって上手くいったのでしょう?」
大丈夫とベルに言われ、安心したようにシルヴィアは笑う。
「お支度手伝ってもよろしいですか?」
ベルの申し出にぱぁぁっと顔を明るくしたシルヴィアは勿論とベルの腕を引く。
「どうしたの、ベル。そんなににこにこして」
「いいえ、随分と仲良くなったなと嬉しくて」
「ふふ、そうね! 私、これからはもっともっと素敵なレディを目指すわ。そしてお兄様だけじゃなくてベルの事も助けてあげる」
私に任せなさいと胸を張る彼女を見ながら、ベルはありがとうございますとお礼を述べた。
**
「わぁ、可愛い。これ、どうしたの?」
「本当はシル様の13歳のお誕生日にお渡ししたかったんですが、あいにく当日祝えそうになくて」
一番にプレゼントをあげたくてフライングで渡しちゃいましたとベルは支度の済んだシルヴィアに仕上げとばかりにイヤリングをつけてあげた。
「公爵令嬢に贈るにはいささか安物で申し訳ありませんが」
「そんなことない、すごく素敵! 私、雪の結晶って好きなの」
「雪が降らないかなーって待ってますもんね」
気に入っていただけて良かったです、とベルは嬉しそうに笑う。
「けど、残念。お誕生日、一緒にいてくれないんだ。お仕事?」
「申し訳ありません」
申し訳なさそうに頭を下げるベルに、
「いいわよ。素敵なレディはそれくらいで怒ったりしないんだから」
寛容なのよ、とシルヴィアは上機嫌で答える。
「シル様、1つお願いを聞いていただけますか?」
「お願い?」
「一度だけ抱きしめてもよろしいですか?」
「いいけど」
困惑するシルヴィアを抱きしめたベルは、
「本当にあっという間に大きくなって、きっとシル様はこの国で一番素敵なレディになられますね。そんなあなたとお友達になれた事、とても嬉しく思います」
優しい口調でそう言った。
「……ベル?」
「シル様にとって、素敵な一年になる事をお祈りしています」
ベルはそう言ってシルヴィアを離すと、
「さぁ、公爵様がお待ちです。楽しんでらしてくださいね」
どうしたんだろう、とシルヴィアは疑問に思ったがベルがあまりにいつも通りに送り出すものだから、後で聞けばいいかと別邸に向かう馬車に乗った。
馬車が見えなくなるまで見送ったベルは、
「申し訳ありません、シル様」
白い息と共に静かに謝罪を吐き出した。
「どうしましょう、ベル! お父様からお食事のお誘いを頂いてしまったわ」
「良かったですね、シル様」
きっと夜会でのシル様のご様子を見て、考えを改められたのでしょうとベルはにこやかに笑う。
「今までこんなことなかったのに、どうしよう。何を着て行って、どんな話をすればいいのかしら?」
ワタワタと慌てるシルヴィアの髪を優しく撫でたベルは、
「そのままのシル様で大丈夫ですよ。シル様のとっておきのドレスを着て、おめかししましょう。きっと公爵様はシル様の最近のご様子やお好きなものなどを知りたいでしょうから、ゆっくりお話しを楽しまれてはいかがでしょうか?」
そうシルヴィアに助言をする。
「私も、お父様のこと全然知らないわ。何がお好きなのかしら?」
「では、シル様の知りたい事もぜひ聞いてみてください。きっと次に繋がるきっかけになるはずですよ」
ベルにそう言われ、そうよねとシルヴィアは嬉しそうに頷く。
「ねぇ、ベル。もし、良ければベルも一緒に」
「せっかくの親子水入らずを邪魔するわけにはいきませんよ。シル様なら、私などいなくても大丈夫です。夜会だって上手くいったのでしょう?」
大丈夫とベルに言われ、安心したようにシルヴィアは笑う。
「お支度手伝ってもよろしいですか?」
ベルの申し出にぱぁぁっと顔を明るくしたシルヴィアは勿論とベルの腕を引く。
「どうしたの、ベル。そんなににこにこして」
「いいえ、随分と仲良くなったなと嬉しくて」
「ふふ、そうね! 私、これからはもっともっと素敵なレディを目指すわ。そしてお兄様だけじゃなくてベルの事も助けてあげる」
私に任せなさいと胸を張る彼女を見ながら、ベルはありがとうございますとお礼を述べた。
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「わぁ、可愛い。これ、どうしたの?」
「本当はシル様の13歳のお誕生日にお渡ししたかったんですが、あいにく当日祝えそうになくて」
一番にプレゼントをあげたくてフライングで渡しちゃいましたとベルは支度の済んだシルヴィアに仕上げとばかりにイヤリングをつけてあげた。
「公爵令嬢に贈るにはいささか安物で申し訳ありませんが」
「そんなことない、すごく素敵! 私、雪の結晶って好きなの」
「雪が降らないかなーって待ってますもんね」
気に入っていただけて良かったです、とベルは嬉しそうに笑う。
「けど、残念。お誕生日、一緒にいてくれないんだ。お仕事?」
「申し訳ありません」
申し訳なさそうに頭を下げるベルに、
「いいわよ。素敵なレディはそれくらいで怒ったりしないんだから」
寛容なのよ、とシルヴィアは上機嫌で答える。
「シル様、1つお願いを聞いていただけますか?」
「お願い?」
「一度だけ抱きしめてもよろしいですか?」
「いいけど」
困惑するシルヴィアを抱きしめたベルは、
「本当にあっという間に大きくなって、きっとシル様はこの国で一番素敵なレディになられますね。そんなあなたとお友達になれた事、とても嬉しく思います」
優しい口調でそう言った。
「……ベル?」
「シル様にとって、素敵な一年になる事をお祈りしています」
ベルはそう言ってシルヴィアを離すと、
「さぁ、公爵様がお待ちです。楽しんでらしてくださいね」
どうしたんだろう、とシルヴィアは疑問に思ったがベルがあまりにいつも通りに送り出すものだから、後で聞けばいいかと別邸に向かう馬車に乗った。
馬車が見えなくなるまで見送ったベルは、
「申し訳ありません、シル様」
白い息と共に静かに謝罪を吐き出した。