結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
雨季ではないこの時期に突発的に起きた記録的な大豪雨。
それは大きな運河を有するブルーノ公爵領で、大きな水害をもたらした。
想定外の雨量に大氾濫した川と流された橋。溢れ出た水や、崩れた土砂により流された村も多数あった。
春先とはいえ夜は冷える。通常でさえそれなのに、家を失った人たちを追い詰めるように寒波が襲う。
そんな未曾有の事態に直面しながら、ルキは資料を片手に頭を抱える。
「……備蓄分じゃ食糧も物資も全然足りないな」
ブルーノ公爵家だけではとても対応の難しい事態に、国や他領にも救援要請を出しているがすぐには動いてもらえずなかなか事態は好転しない。
領地経営は全て父に任せきりだった。次期公爵だというのなら多少父とぶつかってでも、もう少し実情を把握しておくべきだったとルキは今更どうにもできない後悔を握りしめ、今できる最善策を考える。
長い間災害がなく平和だったからという理由で知らない間に減らされていた災害対策予算と備蓄。
有事に慣れていないため自主的に動ける人間の少なさと情報統制がとれない事態が状況を悪化させる。
「ルキ様、商会から物資の見積もりが届きました……が、その」
言葉を濁した執事の手から見積もり書を見れば足元を見たような金額が書かれていた。
「他に取引に応じてくれそうなところは?」
「正直、あまり芳しくはないです」
「だろうね。まぁ、これも自業自得か」
ストラル伯爵領との取引の停止。
それはあっと言う間に商人達の口に乗った。
大きな商会が取引をやめる。何故、という理由を知りたくなるのは当然で、公爵家が不当にストラル社の物流を通行止めしたその経緯が明るみに出るまで時間はかからなかった。
食糧物資などを取り扱う商会からの信頼やストラル伯爵家を支持する下級貴族からの信頼が著しく低下していた中で起きたこの事態に快く支援の手を差し伸べてくれるところは少なかった。
本来なら領主であるルシファーが中心となって事態の収束のために動かなければならなかったのだが、この事態に慌てたルシファーが支援を求めて強引な手段を取ろうとしていたためルキが止めた。
ルシファーのやり方では余計に拗れてしまう。
はじめは口を出すなと言われたが次々と発生する事態に対応できず初動が遅れたルシファーより、ルキに指示を仰ぐ者が多くなり指揮権は事実上ルキに移った。
「言い値で買い付けて構わない。人命救助と物資の配布を優先。2次災害も防がないと。なるべく早く納品してくれるなら多少色をつけても構わない。取引に応じてくれる商会も引き続き探して」
とルキは指示を出す。
「あと、みんなもなるべく交代で休んで欲しい。倒れてしまっては元も子もない」
「……ルキ様こそ、全くお休みなられていないではないですか」
「まぁ、俺が倒れるわけにはいかないけど、この状態じゃ俺が休むわけにもいかないでしょ」
上手く方針立てするためにも刻々と変わる状況を正確に把握できるようにしたいのだが、ルキ自身このような事態に対応した事がなく、やる事が多すぎてとても休めそうにない。
とにかく考えられる限り手を尽くさなくてはとルキは焦りながらも考え続けていた。
それは大きな運河を有するブルーノ公爵領で、大きな水害をもたらした。
想定外の雨量に大氾濫した川と流された橋。溢れ出た水や、崩れた土砂により流された村も多数あった。
春先とはいえ夜は冷える。通常でさえそれなのに、家を失った人たちを追い詰めるように寒波が襲う。
そんな未曾有の事態に直面しながら、ルキは資料を片手に頭を抱える。
「……備蓄分じゃ食糧も物資も全然足りないな」
ブルーノ公爵家だけではとても対応の難しい事態に、国や他領にも救援要請を出しているがすぐには動いてもらえずなかなか事態は好転しない。
領地経営は全て父に任せきりだった。次期公爵だというのなら多少父とぶつかってでも、もう少し実情を把握しておくべきだったとルキは今更どうにもできない後悔を握りしめ、今できる最善策を考える。
長い間災害がなく平和だったからという理由で知らない間に減らされていた災害対策予算と備蓄。
有事に慣れていないため自主的に動ける人間の少なさと情報統制がとれない事態が状況を悪化させる。
「ルキ様、商会から物資の見積もりが届きました……が、その」
言葉を濁した執事の手から見積もり書を見れば足元を見たような金額が書かれていた。
「他に取引に応じてくれそうなところは?」
「正直、あまり芳しくはないです」
「だろうね。まぁ、これも自業自得か」
ストラル伯爵領との取引の停止。
それはあっと言う間に商人達の口に乗った。
大きな商会が取引をやめる。何故、という理由を知りたくなるのは当然で、公爵家が不当にストラル社の物流を通行止めしたその経緯が明るみに出るまで時間はかからなかった。
食糧物資などを取り扱う商会からの信頼やストラル伯爵家を支持する下級貴族からの信頼が著しく低下していた中で起きたこの事態に快く支援の手を差し伸べてくれるところは少なかった。
本来なら領主であるルシファーが中心となって事態の収束のために動かなければならなかったのだが、この事態に慌てたルシファーが支援を求めて強引な手段を取ろうとしていたためルキが止めた。
ルシファーのやり方では余計に拗れてしまう。
はじめは口を出すなと言われたが次々と発生する事態に対応できず初動が遅れたルシファーより、ルキに指示を仰ぐ者が多くなり指揮権は事実上ルキに移った。
「言い値で買い付けて構わない。人命救助と物資の配布を優先。2次災害も防がないと。なるべく早く納品してくれるなら多少色をつけても構わない。取引に応じてくれる商会も引き続き探して」
とルキは指示を出す。
「あと、みんなもなるべく交代で休んで欲しい。倒れてしまっては元も子もない」
「……ルキ様こそ、全くお休みなられていないではないですか」
「まぁ、俺が倒れるわけにはいかないけど、この状態じゃ俺が休むわけにもいかないでしょ」
上手く方針立てするためにも刻々と変わる状況を正確に把握できるようにしたいのだが、ルキ自身このような事態に対応した事がなく、やる事が多すぎてとても休めそうにない。
とにかく考えられる限り手を尽くさなくてはとルキは焦りながらも考え続けていた。