結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
その22、伯爵令嬢と次期公爵
ストラル伯爵の全面的な支援のおかげで危機的状況は脱し、少しずつ、でも確実に復旧に向けて事態は好転して行った。
避難所として解放した建物を自分の目で見て周る余裕ができたルキは、激務の合間を縫ってなるべく出向くようにした。
災害でボロボロになってしまった領地や人々の嘆く声、不安を直接見ながら何とかしなくてはと強く思う。
それと同時にベルと出会っていなかったら、彼女とストラル領を訪れていなかったら、こんな風に自分の目で見ようとは思わなかっただろうなとルキはそんな事を考える。
『できたら報告書で見るその向こうには色んな事を考えてそれぞれ事情を抱えながら生きている人間がいるんだって知っていて欲しくて』
ベルの言葉が不意に耳に響く。
『……飢えるのと凍えるのは本当に辛いから』
そう言っていた彼女の言葉が実感として落ちてくる。
「本当、その通りだね。ベル」
そんな独り言を漏らしながら、ルキは改善すべき重点項目と方針立てを考えていく。
ストラル領を誇らしげに周り領民と関わっていたベルの姿を思い出しながら、この領地を引き継ぐ前にベルに出会えて良かったとルキは心から思う。
全部ベルと同じようにする事はできなくても、彼女のように領民の命と生活を背負える自分でありたい、と悲惨な状況から目を逸らさずにいられるのはベルの貴族としてのあり方を見たからだと彼女との巡り合わせに何度目か分からない感謝をする。
離れてしまっても、会えなくなっても、ずっとベルに支えられている気がする。
だから彼女に失望されるような人間にはならないとルキは気を引き締めて、立ち止まる事なく動き続けた。
ルキが本日立ち寄ったのは、災害地からほどほどに離れたところにある公爵家所有の建物。もとは貸店舗だが、借り手がおらず空いていたので現在は小さな避難所として解放していた。
ここで最後だなと、ルキは従者を伴って中に入る。中に入ってすぐ、子ども達の笑い声が聞こえた。
「すっごーーい! かわいいっ」
と鏡を覗き込みながら少女は編み込みをしてもらった自分の髪を見て笑う。
「お姉ちゃん、次わたしーー!」
他の少女は羨ましそうにわたしもお姫さまになりたいと訴える。
「やぁーだぁー、おねいちゃんつぎぼく! また手品やってー」
「順番、順番! お姉ちゃんは、一人ずつしか魔法かけられないだって」
みんなやってあげるから、と子ども達が囲むその中心にチョコレートブラウンの髪とアクアマリンの目を瞬かせて楽しそうに笑う、彼女がいた。
「お姉ちゃん、本当に魔法使いみたい」
そう言われて嬉しそうに笑い、無意識に耳を触り、でしょ? と彼女ははにかむ。
照れている時の彼女の仕草は変わらずで、誰かの魔法使いになりたくて、と言っていた彼女の言葉を思い出す。
「いやぁーでもやっぱりこのアウターは最&高だね! 可愛すぎかっ!! デザイン神過ぎる」
ふふっと楽しげに子どもたちに寒くない? と彼女が聞くと子ども達はみんな手をあげてあったかいよと満面の笑みを浮かべる。
「んーネコも可愛いけど、クマ耳破壊力ヤバっー! もう、みんなお持ち帰りしたいっ」
そんな子ども達を眺めて満足気にそう笑った彼女は、
「大事に着て、サイズアウトしたら他の子に回してあげて欲しいな。2枚目が欲しくなったらクロネコ商会まで♪」
みんな可愛いから割引しちゃうぞとちゃっかりそう宣伝した。
避難所として解放した建物を自分の目で見て周る余裕ができたルキは、激務の合間を縫ってなるべく出向くようにした。
災害でボロボロになってしまった領地や人々の嘆く声、不安を直接見ながら何とかしなくてはと強く思う。
それと同時にベルと出会っていなかったら、彼女とストラル領を訪れていなかったら、こんな風に自分の目で見ようとは思わなかっただろうなとルキはそんな事を考える。
『できたら報告書で見るその向こうには色んな事を考えてそれぞれ事情を抱えながら生きている人間がいるんだって知っていて欲しくて』
ベルの言葉が不意に耳に響く。
『……飢えるのと凍えるのは本当に辛いから』
そう言っていた彼女の言葉が実感として落ちてくる。
「本当、その通りだね。ベル」
そんな独り言を漏らしながら、ルキは改善すべき重点項目と方針立てを考えていく。
ストラル領を誇らしげに周り領民と関わっていたベルの姿を思い出しながら、この領地を引き継ぐ前にベルに出会えて良かったとルキは心から思う。
全部ベルと同じようにする事はできなくても、彼女のように領民の命と生活を背負える自分でありたい、と悲惨な状況から目を逸らさずにいられるのはベルの貴族としてのあり方を見たからだと彼女との巡り合わせに何度目か分からない感謝をする。
離れてしまっても、会えなくなっても、ずっとベルに支えられている気がする。
だから彼女に失望されるような人間にはならないとルキは気を引き締めて、立ち止まる事なく動き続けた。
ルキが本日立ち寄ったのは、災害地からほどほどに離れたところにある公爵家所有の建物。もとは貸店舗だが、借り手がおらず空いていたので現在は小さな避難所として解放していた。
ここで最後だなと、ルキは従者を伴って中に入る。中に入ってすぐ、子ども達の笑い声が聞こえた。
「すっごーーい! かわいいっ」
と鏡を覗き込みながら少女は編み込みをしてもらった自分の髪を見て笑う。
「お姉ちゃん、次わたしーー!」
他の少女は羨ましそうにわたしもお姫さまになりたいと訴える。
「やぁーだぁー、おねいちゃんつぎぼく! また手品やってー」
「順番、順番! お姉ちゃんは、一人ずつしか魔法かけられないだって」
みんなやってあげるから、と子ども達が囲むその中心にチョコレートブラウンの髪とアクアマリンの目を瞬かせて楽しそうに笑う、彼女がいた。
「お姉ちゃん、本当に魔法使いみたい」
そう言われて嬉しそうに笑い、無意識に耳を触り、でしょ? と彼女ははにかむ。
照れている時の彼女の仕草は変わらずで、誰かの魔法使いになりたくて、と言っていた彼女の言葉を思い出す。
「いやぁーでもやっぱりこのアウターは最&高だね! 可愛すぎかっ!! デザイン神過ぎる」
ふふっと楽しげに子どもたちに寒くない? と彼女が聞くと子ども達はみんな手をあげてあったかいよと満面の笑みを浮かべる。
「んーネコも可愛いけど、クマ耳破壊力ヤバっー! もう、みんなお持ち帰りしたいっ」
そんな子ども達を眺めて満足気にそう笑った彼女は、
「大事に着て、サイズアウトしたら他の子に回してあげて欲しいな。2枚目が欲しくなったらクロネコ商会まで♪」
みんな可愛いから割引しちゃうぞとちゃっかりそう宣伝した。