結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
「はぁぁああ!? なっ、だって、はい? お姫様と交際してたのに!?」
とっくに婚約破棄されたと思っていたベルはルキに詰め寄りそう叫ぶ。
「向こうの希望を聞いてお試し交際してただけだよ。婚約まではいかなかったから、届ける必要もないし」
あれだけ派手に婚約破棄騒動したから、みんな婚約破棄済みだと思って調べられもしなかったとルキは悪びれることなくそう言った。
「……二股、っていうよりも普通に契約違反じゃない」
契約満了後は婚約破棄してって言ったよね!? と呆れた顔を浮かべるベルに、
「二股じゃないよ。ずっとベルの事だけ想ってた。それにキチンと破棄されたかどうか確認してないベルにも落ち度があるんじゃないの?」
動じる事なくにこにこと笑ってルキは応じる。
念の為不受理届けは出していたが、婚約破棄したいというベルからの申し出や婚約破棄の書類が提出されたという連絡もなかった。
だから本契約した際に書いた婚約破棄申請書は今も鍵をかけた保管庫の中に預けられたままだ。
「……お姫様と婚約する時、どうするつもりだったのよ」
書類上とはいえ婚約中の身で他国の王族と交際など向こうにバレたらルキだってただではすまなかっただろうに、とベルは呆れたように顔を顰める。
「表向きは親睦のための滞在だし、うちは王女様を丁重にお預かりしていただけだよ。それにアネッサ王女ならともかく、エステル王女は異国で1人取り残されれば遠からず音を上げるって踏んでたから」
相手に合わせて対応を変えるくらいはいつもやってるとルキは事も投げにそう告げる。
ああ、そうだったとベルは頭痛でもするかのように額を押さえる。
ルキはいつも沢山の難しい案件を抱え、他国の要人と駆け引きをし、連勝しているこの国の外交省のエースだ。普段はともかく"仕事中"のルキが優秀なのは間違いなく、恋に夢中で周りが見えないお姫様を転がすくらい容易い。
「……ルキの愛が重い」
「そんなに褒められても」
ため息をついたベルに見惚れるくらい綺麗な笑顔で応戦してくるルキと目が合いベルは苦笑する。
「事業内容は面白いと思うけど、これは私の一存で決められるものではないからとりあえず一旦保留で社に持ち帰らせてください」
プレゼン資料を受け取ってベルはキッパリそう言った。
「それはもちろん。ただ決定権はベルにあるってさ」
すでにビジネス面は兄に話を通し済みかと確認し、ベルは今後この件についてはゆっくり考えることにする。
「ベルが前向きに考えてくれたら嬉しい」
そういうルキの綺麗な濃紺の瞳には自分だけが映っていて、全力で絡め取りにきたその熱が全部自分に向けられている。それが素直に嬉しくて、ベルの胸は高鳴った。
とっくに婚約破棄されたと思っていたベルはルキに詰め寄りそう叫ぶ。
「向こうの希望を聞いてお試し交際してただけだよ。婚約まではいかなかったから、届ける必要もないし」
あれだけ派手に婚約破棄騒動したから、みんな婚約破棄済みだと思って調べられもしなかったとルキは悪びれることなくそう言った。
「……二股、っていうよりも普通に契約違反じゃない」
契約満了後は婚約破棄してって言ったよね!? と呆れた顔を浮かべるベルに、
「二股じゃないよ。ずっとベルの事だけ想ってた。それにキチンと破棄されたかどうか確認してないベルにも落ち度があるんじゃないの?」
動じる事なくにこにこと笑ってルキは応じる。
念の為不受理届けは出していたが、婚約破棄したいというベルからの申し出や婚約破棄の書類が提出されたという連絡もなかった。
だから本契約した際に書いた婚約破棄申請書は今も鍵をかけた保管庫の中に預けられたままだ。
「……お姫様と婚約する時、どうするつもりだったのよ」
書類上とはいえ婚約中の身で他国の王族と交際など向こうにバレたらルキだってただではすまなかっただろうに、とベルは呆れたように顔を顰める。
「表向きは親睦のための滞在だし、うちは王女様を丁重にお預かりしていただけだよ。それにアネッサ王女ならともかく、エステル王女は異国で1人取り残されれば遠からず音を上げるって踏んでたから」
相手に合わせて対応を変えるくらいはいつもやってるとルキは事も投げにそう告げる。
ああ、そうだったとベルは頭痛でもするかのように額を押さえる。
ルキはいつも沢山の難しい案件を抱え、他国の要人と駆け引きをし、連勝しているこの国の外交省のエースだ。普段はともかく"仕事中"のルキが優秀なのは間違いなく、恋に夢中で周りが見えないお姫様を転がすくらい容易い。
「……ルキの愛が重い」
「そんなに褒められても」
ため息をついたベルに見惚れるくらい綺麗な笑顔で応戦してくるルキと目が合いベルは苦笑する。
「事業内容は面白いと思うけど、これは私の一存で決められるものではないからとりあえず一旦保留で社に持ち帰らせてください」
プレゼン資料を受け取ってベルはキッパリそう言った。
「それはもちろん。ただ決定権はベルにあるってさ」
すでにビジネス面は兄に話を通し済みかと確認し、ベルは今後この件についてはゆっくり考えることにする。
「ベルが前向きに考えてくれたら嬉しい」
そういうルキの綺麗な濃紺の瞳には自分だけが映っていて、全力で絡め取りにきたその熱が全部自分に向けられている。それが素直に嬉しくて、ベルの胸は高鳴った。