結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
番外編3 夫婦の決め事
休日の昼下がり、ストラル伯爵家のリビングにはどう見てもお出かけ準備完了済みのベルが、全く出かける気配なく居座っていた。
「かーわーいーいーーー!! はぁ、レノはなんでこんな可愛いのぉ〜」
可愛い可愛いと何度もベルは連呼する。
ベルが愛でている赤子の名前はレノルド・ストラル。春先に生まれた兄夫婦の第一子、ベル待望の甥っ子である。
「ふふ、可愛いでしょー。まぁ私と伯爵の子が可愛くないわけがありませんから」
産後我が子に関して"謙遜"の二文字が行方不明になったベロニカがドヤ顔で我が子の可愛さを自慢する。
「はぁ、天使。お義姉様、我が家に天使がいるわ〜」
「天に召されたら困るんですけど、天使ですよねぇ。ふふ、眉間の皺が伯爵そっくり」
「……そこは似なくていいと思うわ」
ちなみにこのやりとりはかれこれ1時間は続いている。
時計をチラッと見た伯爵は手に持ったパンがゆを混ぜつつ、
「ベル、お前今日公爵家に行く日じゃなかったか?」
いつまでそうしている気なんだと呆れ顔でそう尋ねた。
「……そう、なんだけど。でも時間は明確に約束してない……って、いうかですね」
ベルは生後5ヶ月を迎えようとする甥っ子を抱き抱えると、
「もう、ぶっちゃけ今日は行きたくないっ。レノが可愛い! ずっとレノ鑑賞会してたいっ!!」
来月にはこのうち出て行ってレノと暮らせないとか辛すぎるっと叫びながらレノに頬擦りした。
「あらあら、私としてはベルさんがいてくれたらとっても助かりますけど」
伯爵からパンがゆを受け取って固さを確認し、オッケーを出したベロニカは笑いながら
もういっそのことお嫁に行かずに通い妻にします? と冗談混じりに提案する。
「ベル、何有りかもしれないみたいな顔してんだよ。あとレノ返せ。離乳食やれないだろうが」
ベルからレノを奪い返した伯爵は、
「嫁に行きたくないなら自分で断れよ。俺は手を貸さないからな」
と淡々とした口調でそう言った。
「……行きたくないわけじゃない……けど、なんなら結婚3〜4年くらい遅らせたいっ!!」
「へーそれは初耳」
ドアの方から聞き覚えのある声がして、ベルはぎこちない動作で振り返る。
「な、なんでルキがうちに」
「伯爵が呼んでくれたんだよ。俺達には話し合いが必要みたいだね?」
キラキラした笑顔を浮かべているが、ものすごくお怒りだと分かるくらい冷たい冷気の漂うルキに初めて"氷の貴公子"の異名が似合うかもしれないと思いながらベルは背筋を正した。
「……お兄様、可愛い妹を売りましたね?」
「可愛い妹を思えばこそ、だろ。婚約者呼ばれるの嫌ならさっさと公爵家の面会に行けよ」
しれっとそう言い返した伯爵は、
「ルキ。ベルに逃走されたら面倒だし、なんならこのまま結婚式当日まで公爵家で拘束しておいていいぞ」
と許可を出した。
「ご協力感謝します、お義兄さん」
ベルが抗議の声を上げる前にそう言ってルキは軽く会釈をする。
「……まだ義兄じゃねぇよ」
ぼそっといい返した伯爵に、伯爵もそろそろ妹離れしなきゃですねぇと揶揄うように笑ったベロニカは、
「ふふ、ルキさん。ベルさんをよろしくお願いしますね」
にこやかに笑って2人を家から追い出した。
「かーわーいーいーーー!! はぁ、レノはなんでこんな可愛いのぉ〜」
可愛い可愛いと何度もベルは連呼する。
ベルが愛でている赤子の名前はレノルド・ストラル。春先に生まれた兄夫婦の第一子、ベル待望の甥っ子である。
「ふふ、可愛いでしょー。まぁ私と伯爵の子が可愛くないわけがありませんから」
産後我が子に関して"謙遜"の二文字が行方不明になったベロニカがドヤ顔で我が子の可愛さを自慢する。
「はぁ、天使。お義姉様、我が家に天使がいるわ〜」
「天に召されたら困るんですけど、天使ですよねぇ。ふふ、眉間の皺が伯爵そっくり」
「……そこは似なくていいと思うわ」
ちなみにこのやりとりはかれこれ1時間は続いている。
時計をチラッと見た伯爵は手に持ったパンがゆを混ぜつつ、
「ベル、お前今日公爵家に行く日じゃなかったか?」
いつまでそうしている気なんだと呆れ顔でそう尋ねた。
「……そう、なんだけど。でも時間は明確に約束してない……って、いうかですね」
ベルは生後5ヶ月を迎えようとする甥っ子を抱き抱えると、
「もう、ぶっちゃけ今日は行きたくないっ。レノが可愛い! ずっとレノ鑑賞会してたいっ!!」
来月にはこのうち出て行ってレノと暮らせないとか辛すぎるっと叫びながらレノに頬擦りした。
「あらあら、私としてはベルさんがいてくれたらとっても助かりますけど」
伯爵からパンがゆを受け取って固さを確認し、オッケーを出したベロニカは笑いながら
もういっそのことお嫁に行かずに通い妻にします? と冗談混じりに提案する。
「ベル、何有りかもしれないみたいな顔してんだよ。あとレノ返せ。離乳食やれないだろうが」
ベルからレノを奪い返した伯爵は、
「嫁に行きたくないなら自分で断れよ。俺は手を貸さないからな」
と淡々とした口調でそう言った。
「……行きたくないわけじゃない……けど、なんなら結婚3〜4年くらい遅らせたいっ!!」
「へーそれは初耳」
ドアの方から聞き覚えのある声がして、ベルはぎこちない動作で振り返る。
「な、なんでルキがうちに」
「伯爵が呼んでくれたんだよ。俺達には話し合いが必要みたいだね?」
キラキラした笑顔を浮かべているが、ものすごくお怒りだと分かるくらい冷たい冷気の漂うルキに初めて"氷の貴公子"の異名が似合うかもしれないと思いながらベルは背筋を正した。
「……お兄様、可愛い妹を売りましたね?」
「可愛い妹を思えばこそ、だろ。婚約者呼ばれるの嫌ならさっさと公爵家の面会に行けよ」
しれっとそう言い返した伯爵は、
「ルキ。ベルに逃走されたら面倒だし、なんならこのまま結婚式当日まで公爵家で拘束しておいていいぞ」
と許可を出した。
「ご協力感謝します、お義兄さん」
ベルが抗議の声を上げる前にそう言ってルキは軽く会釈をする。
「……まだ義兄じゃねぇよ」
ぼそっといい返した伯爵に、伯爵もそろそろ妹離れしなきゃですねぇと揶揄うように笑ったベロニカは、
「ふふ、ルキさん。ベルさんをよろしくお願いしますね」
にこやかに笑って2人を家から追い出した。