結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
「……ベルは何がそんなに気に入らないんだ? マダム・リリスのドレス好きだって言ってなかったか?」
日頃のベルは暇さえあればシルヴィアのドレスを眺めて大絶賛をし、シルヴィアのファッションショーに飽きる事なく付き合って、シルヴィアのサイズアウトした不要なドレスを将来買い取りたいと幾度となくプレゼンしていた。
ちなみにルキ立会の元、ベルの買取りたいドレス全てにOKを出したシルヴィアとはすでにドレス売買仮契約済みだ。
「好きですよ! 何なら3日3晩語りまくれるくらい大好物ですよっ!! でもっ」
そう、もちろん躊躇うことなくマダム・リリスのドレスは大好きだ。
ベルはドレスデザイナー、マダム・リリスの大ファンである。もっとも一生自分が着ることはないだろうと思っていたのだけど。
だが、しかし。である。
「マダム・リリスといえば新規予約は3年待ち、顧客からの紹介状必須で、一見さんはお断り。体のラインがキレイに見える曲線美とバックからみた時映えるように計算され尽くされたフリルやレース使いが特徴のドレスが多く、そのドレスを身につけるのは上流階級子女の憧れとともにステータスとも言われていて、中流階級以下にはカタログすら入手困難なわけですよ! それを、あんなあっさりと。ちょっと奮発したお菓子買うのとはわけが違うんですよ?」
ぐっと拳を作り、ベルはマダム・リリスとドレスについて熱弁し、主に緊張疲れでぐったりと疲労しているわけを訴えるが、
「……詳しいな。まぁ、シルはマダムの上客だから3年待つ事なんてないけど」
「呼んだらすぐ来てくれるわよ?」
それが何か? と言わんばかりの名門公爵家の2人には全く伝わる気配がない。
「……ここに住んで今日が一番心臓に悪かったです」
何を言っても多分この2人と分かり合える日は来ないと悟ったベルは、大きくため息をついて諦めた。
「ルキ様、ドレスこんなにいりません。それにお恥ずかしい話ですが、私には今すぐこちらの代金支払えるだけの財力が有りません。本当に申し訳ないのですが、ドレスの購入は1着〜2着で、分割払いさせてください。利子上乗せで構いませんから」
デザイン画を見れただけでも貴重な体験だったと思う事にしたベルは、ルキに向かって現実的な話をする。
「は? なんでベルが払うんだ」
「なんで、って私のドレスですよね? しかも今度のパーティーに着て行く用の」
「そのつもりだが」
元々ベルは手持ちのドレスで行くつもりだった。
だが、本日突然ドレス購入を告げられたベルは、いきなり対面した憧れのデザイナーとその助手から採寸され、おそろしい速度で仕上げられたデザイン画を見せられている。
「……マダム・リリスのオーダーメイドドレスだったので、てっきり買取かと。レンタルでも良いのですか? それならなんとか起業資金崩せば払えるかもしれません」
微妙に会話が噛み合わないルキに首を傾げつつ、ベルは自身の懐具合を申告する。
「そもそも俺はベルに払わせる気なんてないんだが」
ん? と会話が噛み合っていない事に気づいたルキはそう言うが、
「? なぜです?」
解せないと、ベルはさらに首を傾げる。
「なぜ、って。むしろなんでベルが払う?」
君は俺の婚約者(仮)だろう、とルキは当たり前のようにそう言った。
そんなルキに向かってベルはため息をついて首を振る。
「……もらう理由がありません」
「ベル、恋人がドレスを贈るなんて普通じゃない? それなのにどうして?」
2人の関係が1年限りの契約婚約だと知らないシルヴィアは不思議そうに2人の間で視線を彷徨わせる。
「シル、少し席を外してくれるか?」
ルキに困ったような顔をしてベルと2人で話したいと告げられ、シルヴィアは渋々退席していった。
日頃のベルは暇さえあればシルヴィアのドレスを眺めて大絶賛をし、シルヴィアのファッションショーに飽きる事なく付き合って、シルヴィアのサイズアウトした不要なドレスを将来買い取りたいと幾度となくプレゼンしていた。
ちなみにルキ立会の元、ベルの買取りたいドレス全てにOKを出したシルヴィアとはすでにドレス売買仮契約済みだ。
「好きですよ! 何なら3日3晩語りまくれるくらい大好物ですよっ!! でもっ」
そう、もちろん躊躇うことなくマダム・リリスのドレスは大好きだ。
ベルはドレスデザイナー、マダム・リリスの大ファンである。もっとも一生自分が着ることはないだろうと思っていたのだけど。
だが、しかし。である。
「マダム・リリスといえば新規予約は3年待ち、顧客からの紹介状必須で、一見さんはお断り。体のラインがキレイに見える曲線美とバックからみた時映えるように計算され尽くされたフリルやレース使いが特徴のドレスが多く、そのドレスを身につけるのは上流階級子女の憧れとともにステータスとも言われていて、中流階級以下にはカタログすら入手困難なわけですよ! それを、あんなあっさりと。ちょっと奮発したお菓子買うのとはわけが違うんですよ?」
ぐっと拳を作り、ベルはマダム・リリスとドレスについて熱弁し、主に緊張疲れでぐったりと疲労しているわけを訴えるが、
「……詳しいな。まぁ、シルはマダムの上客だから3年待つ事なんてないけど」
「呼んだらすぐ来てくれるわよ?」
それが何か? と言わんばかりの名門公爵家の2人には全く伝わる気配がない。
「……ここに住んで今日が一番心臓に悪かったです」
何を言っても多分この2人と分かり合える日は来ないと悟ったベルは、大きくため息をついて諦めた。
「ルキ様、ドレスこんなにいりません。それにお恥ずかしい話ですが、私には今すぐこちらの代金支払えるだけの財力が有りません。本当に申し訳ないのですが、ドレスの購入は1着〜2着で、分割払いさせてください。利子上乗せで構いませんから」
デザイン画を見れただけでも貴重な体験だったと思う事にしたベルは、ルキに向かって現実的な話をする。
「は? なんでベルが払うんだ」
「なんで、って私のドレスですよね? しかも今度のパーティーに着て行く用の」
「そのつもりだが」
元々ベルは手持ちのドレスで行くつもりだった。
だが、本日突然ドレス購入を告げられたベルは、いきなり対面した憧れのデザイナーとその助手から採寸され、おそろしい速度で仕上げられたデザイン画を見せられている。
「……マダム・リリスのオーダーメイドドレスだったので、てっきり買取かと。レンタルでも良いのですか? それならなんとか起業資金崩せば払えるかもしれません」
微妙に会話が噛み合わないルキに首を傾げつつ、ベルは自身の懐具合を申告する。
「そもそも俺はベルに払わせる気なんてないんだが」
ん? と会話が噛み合っていない事に気づいたルキはそう言うが、
「? なぜです?」
解せないと、ベルはさらに首を傾げる。
「なぜ、って。むしろなんでベルが払う?」
君は俺の婚約者(仮)だろう、とルキは当たり前のようにそう言った。
そんなルキに向かってベルはため息をついて首を振る。
「……もらう理由がありません」
「ベル、恋人がドレスを贈るなんて普通じゃない? それなのにどうして?」
2人の関係が1年限りの契約婚約だと知らないシルヴィアは不思議そうに2人の間で視線を彷徨わせる。
「シル、少し席を外してくれるか?」
ルキに困ったような顔をしてベルと2人で話したいと告げられ、シルヴィアは渋々退席していった。