結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
完全に部屋に2人きりになったのを確認してから、
「ルキ様、私やっぱり受け取れません。公爵家の財力からしたら微々たるものかもしれませんが、こんな大層なドレス私には分不相応です。ましてや1年限りの恋人ごっこの相手に贈るなんて、どうかしてる」
ベルは静かにそう言った。
「ドレス1着で、庶民なら1年暮らせちゃう金額ですよ? 公爵家のお金だって、元を突き詰めれば領地からの税収でしょう? もらえませんよ」
ふるふると首を振ったベルは、改めてこの人は天の上の人なのだなと思う。
このまま流されてしまっては、金銭感覚が麻痺してしまいそうだ。
「ベルは変なとこで謙虚だな」
黙ってもらってしまっても責められることなんてないだろうし、ルキは女性とはドレスや宝石を贈られて当然と思っている生き物だと思っていた。
だが目の前に座るベルは困ったような顔をして、頑として受取拒否の姿勢を崩さない。
ルキはそんなベルに淡々と事実を述べていく。
「ベル、公爵家の婚約者ともなれば、たとえ仮初でも君が思っている以上に人から見られる。君の衣装ひとつとってもそれは公爵家全体的の評価にも繋がる」
「……それは、理解できますが」
「貴族の男が婚約者にドレスや装飾品を贈るのは当たり前だ。平たく言えば、公爵家の見栄のために贈っているといってもいい」
だけど、とルキは思う。この3ヶ月で知った彼女は、少なくとも今まで出会った令嬢とは違うのだ。
ルキはふっと表情を崩し、
「だから、気にしなくていい……と言ったところでベルは納得できないだろうから。折衷案を提案したい」
そう言った。
折衷案? と繰り返すベルにルキは頷いてみせる。
「ベル、君と俺はそれぞれの利害が一致しただけの契約関係だ」
君は上流階級とのコネクションが欲しい、俺は結婚せずに爵位継承するための準備時間が欲しい。
それぞれの利について述べたルキにベルはコクンと頷く。そう、ルキとはそれだけの関係だ。それも今はまだ本契約前の試用期間中だ。
「ドレスは俺が公爵家とは関係なく個人的に稼いだ金で買う。そしてそれはベルへの成功報酬として渡すことにするというのはどうだろうか?」
それなら、もらう理由にならないか? とルキはベルに尋ねる。
「成功報酬?」
「君に求めることは2つ。1つ目、公爵令息である俺の婚約者として相応しく演じること」
ルキは指を2本立てて依頼内容を話す。
「2つ目、俺を狙う女性達から守って欲しい。たまには心穏やかに過ごしたい」
割とガチなトーンでルキはそう言った。
「………………。」
「真剣なんだが」
そんなルキの顔を見て、ベルは心底おかしそうに笑い出す。
「ふっ、あははは、守ってって。いい大人が、守って欲しいって……あーおっかしい」
「笑い事じゃないぞ、毎度しつこい女に絡まれたり、無理矢理ダンスに誘われたり、身に覚えのない修羅場に巻き込まれたり、休憩室に閉じ込められたり、はては飲食物に媚薬や睡眠薬混ぜられてみろ? うんざり通り越して、普通に犯罪だからな」
「なんていうか、こう。ドンマイ」
生きていればいいことあるよ、うん。とベルは親指を立てて笑いながらそう言った。
「凄まじく他人事な上に、言い方が腹立たしい」
ひとの苦労を一言でまとめやがってとルキは顔を顰めるが、
「まぁ、でも冗談抜きでそれが回避できるなら、俺にとってはドレスの1着や2着安いもんだ」
と改めてそう言った。
「分かりました。ルキ様の貞操は私が守ります。私の後ろに隠れていていいですよ? 王子様」
ニヤニヤ笑いながらベルは、了承を告げる。
「言い方が非常に腹立つが、期待してる」
パートナー連れでのパーティー参加は初めてだが、これで周りが大人しくなるならと期待しているのも確かなので、ルキはベルの物言いに目を瞑ることにした。
「ルキ様、私やっぱり受け取れません。公爵家の財力からしたら微々たるものかもしれませんが、こんな大層なドレス私には分不相応です。ましてや1年限りの恋人ごっこの相手に贈るなんて、どうかしてる」
ベルは静かにそう言った。
「ドレス1着で、庶民なら1年暮らせちゃう金額ですよ? 公爵家のお金だって、元を突き詰めれば領地からの税収でしょう? もらえませんよ」
ふるふると首を振ったベルは、改めてこの人は天の上の人なのだなと思う。
このまま流されてしまっては、金銭感覚が麻痺してしまいそうだ。
「ベルは変なとこで謙虚だな」
黙ってもらってしまっても責められることなんてないだろうし、ルキは女性とはドレスや宝石を贈られて当然と思っている生き物だと思っていた。
だが目の前に座るベルは困ったような顔をして、頑として受取拒否の姿勢を崩さない。
ルキはそんなベルに淡々と事実を述べていく。
「ベル、公爵家の婚約者ともなれば、たとえ仮初でも君が思っている以上に人から見られる。君の衣装ひとつとってもそれは公爵家全体的の評価にも繋がる」
「……それは、理解できますが」
「貴族の男が婚約者にドレスや装飾品を贈るのは当たり前だ。平たく言えば、公爵家の見栄のために贈っているといってもいい」
だけど、とルキは思う。この3ヶ月で知った彼女は、少なくとも今まで出会った令嬢とは違うのだ。
ルキはふっと表情を崩し、
「だから、気にしなくていい……と言ったところでベルは納得できないだろうから。折衷案を提案したい」
そう言った。
折衷案? と繰り返すベルにルキは頷いてみせる。
「ベル、君と俺はそれぞれの利害が一致しただけの契約関係だ」
君は上流階級とのコネクションが欲しい、俺は結婚せずに爵位継承するための準備時間が欲しい。
それぞれの利について述べたルキにベルはコクンと頷く。そう、ルキとはそれだけの関係だ。それも今はまだ本契約前の試用期間中だ。
「ドレスは俺が公爵家とは関係なく個人的に稼いだ金で買う。そしてそれはベルへの成功報酬として渡すことにするというのはどうだろうか?」
それなら、もらう理由にならないか? とルキはベルに尋ねる。
「成功報酬?」
「君に求めることは2つ。1つ目、公爵令息である俺の婚約者として相応しく演じること」
ルキは指を2本立てて依頼内容を話す。
「2つ目、俺を狙う女性達から守って欲しい。たまには心穏やかに過ごしたい」
割とガチなトーンでルキはそう言った。
「………………。」
「真剣なんだが」
そんなルキの顔を見て、ベルは心底おかしそうに笑い出す。
「ふっ、あははは、守ってって。いい大人が、守って欲しいって……あーおっかしい」
「笑い事じゃないぞ、毎度しつこい女に絡まれたり、無理矢理ダンスに誘われたり、身に覚えのない修羅場に巻き込まれたり、休憩室に閉じ込められたり、はては飲食物に媚薬や睡眠薬混ぜられてみろ? うんざり通り越して、普通に犯罪だからな」
「なんていうか、こう。ドンマイ」
生きていればいいことあるよ、うん。とベルは親指を立てて笑いながらそう言った。
「凄まじく他人事な上に、言い方が腹立たしい」
ひとの苦労を一言でまとめやがってとルキは顔を顰めるが、
「まぁ、でも冗談抜きでそれが回避できるなら、俺にとってはドレスの1着や2着安いもんだ」
と改めてそう言った。
「分かりました。ルキ様の貞操は私が守ります。私の後ろに隠れていていいですよ? 王子様」
ニヤニヤ笑いながらベルは、了承を告げる。
「言い方が非常に腹立つが、期待してる」
パートナー連れでのパーティー参加は初めてだが、これで周りが大人しくなるならと期待しているのも確かなので、ルキはベルの物言いに目を瞑ることにした。