結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
もうすっかりベルの部屋と化してしまった物置部屋のドアを軽くノックをしたルキは、
「今、ちょっといいか?」
顔を覗かせたベルにそう尋ねた。
どうぞ〜と返事をしてベルは部屋にルキを招く。
「仕事中、か」
机に広げられた資料をみながら、ルキは尋ねる。
「ええ、ちょっとコンペが近くって。夏に向けてこの企画はぜひ通したい」
担当とってガッツリ稼ぐのですと意気込むベルに、
「家事手伝い、とか言って悪かったな」
と詫びる。
「今更〜? まぁいいですけど」
別に気にしてないと笑ったベルは、
「お茶飲みます?」
紅茶の出涸らし水出し茶しかないけどとコップに注いでルキに渡す。
差し出されたそれを受け取ったルキは文句も言わずに口をつけた。
「ふふ、最初の頃からは考えられないですね」
そんなルキを見ながら揶揄うように笑ったベルは、
「私もちょうどご用があったんです」
とソファーに座ったルキに小さな箱を手渡す。
「ドレスのお礼としては、随分安くて申し訳ないんですけど」
ベルから了承をとって箱を開けたルキは、
「これ、シャノワールの万年筆だな。名入りか。見たことないデザインだな」
とベルに贈られた万年筆を手に取る。
「まだ販売前なので。ルキ様の万年筆全部シャノワール揃えなので、どうせ渡すなら使えるものがいいかなって」
書きやすいですよね、とベルは自分のペンを指してそう言う。
「ああ、ここの商品は気に入っていてな。それにしてもよく販売前の商品手に入ったな」
よく見てるなと思いつつ、礼をいってありがたく受け取ったルキは不思議そうにつぶやく。
「そりゃあまぁ、母体がストラル社なんで」
種明かしするかのようにつぶやきに返事をしたベルは、
「は?」
「だから言ったじゃないですか、婚約者にもう少し興味持てってあなたが言ったとき、そっくりそのままお返ししますって」
驚いてベルの方をマジマジと見てくる濃紺の瞳にそう言って笑った。
「ターゲット層で商会名分けてるだけで、貴族向けに特化した高級品の取り扱いが、会員制商会シャノワール。それ以外がクロネコ商会で、私の主だった担当がクロネコ商会ってだけです」
つまりブルーノ公爵家は我が社のお得意様ということですね、いつもお買い上げありがとうございますとベルはネタバレをする。
「全然知らなかった」
「足元おろそか過ぎません? そんなだから私におちょくられるんですよ」
「おちょくってる自覚あったのかよ」
「ふふ、ルキ様って本当に残念なイケメンですよねぇ」
揶揄うような楽しげなアクアマリンの瞳にそう言われても、最近は苛立つことがなくなったなとルキは不思議に思う。
「今、ちょっといいか?」
顔を覗かせたベルにそう尋ねた。
どうぞ〜と返事をしてベルは部屋にルキを招く。
「仕事中、か」
机に広げられた資料をみながら、ルキは尋ねる。
「ええ、ちょっとコンペが近くって。夏に向けてこの企画はぜひ通したい」
担当とってガッツリ稼ぐのですと意気込むベルに、
「家事手伝い、とか言って悪かったな」
と詫びる。
「今更〜? まぁいいですけど」
別に気にしてないと笑ったベルは、
「お茶飲みます?」
紅茶の出涸らし水出し茶しかないけどとコップに注いでルキに渡す。
差し出されたそれを受け取ったルキは文句も言わずに口をつけた。
「ふふ、最初の頃からは考えられないですね」
そんなルキを見ながら揶揄うように笑ったベルは、
「私もちょうどご用があったんです」
とソファーに座ったルキに小さな箱を手渡す。
「ドレスのお礼としては、随分安くて申し訳ないんですけど」
ベルから了承をとって箱を開けたルキは、
「これ、シャノワールの万年筆だな。名入りか。見たことないデザインだな」
とベルに贈られた万年筆を手に取る。
「まだ販売前なので。ルキ様の万年筆全部シャノワール揃えなので、どうせ渡すなら使えるものがいいかなって」
書きやすいですよね、とベルは自分のペンを指してそう言う。
「ああ、ここの商品は気に入っていてな。それにしてもよく販売前の商品手に入ったな」
よく見てるなと思いつつ、礼をいってありがたく受け取ったルキは不思議そうにつぶやく。
「そりゃあまぁ、母体がストラル社なんで」
種明かしするかのようにつぶやきに返事をしたベルは、
「は?」
「だから言ったじゃないですか、婚約者にもう少し興味持てってあなたが言ったとき、そっくりそのままお返ししますって」
驚いてベルの方をマジマジと見てくる濃紺の瞳にそう言って笑った。
「ターゲット層で商会名分けてるだけで、貴族向けに特化した高級品の取り扱いが、会員制商会シャノワール。それ以外がクロネコ商会で、私の主だった担当がクロネコ商会ってだけです」
つまりブルーノ公爵家は我が社のお得意様ということですね、いつもお買い上げありがとうございますとベルはネタバレをする。
「全然知らなかった」
「足元おろそか過ぎません? そんなだから私におちょくられるんですよ」
「おちょくってる自覚あったのかよ」
「ふふ、ルキ様って本当に残念なイケメンですよねぇ」
揶揄うような楽しげなアクアマリンの瞳にそう言われても、最近は苛立つことがなくなったなとルキは不思議に思う。