結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
「!! 正式に婚約してくださるんですか?」
ぱぁぁっと嬉しそうな顔をしたベルは、明るい声でそう言った。
「ああ、風除け役も申し分なかったし」
そんなベルを見ながらルキは淡々とベルの働きをそう評する。
「……の割に、浮かない顔ですね」
気になることでも? とベルに促されルキはベルの顔をじっとみる。
「……君は、本当に俺と婚約してしまって構わないのか?」
そして、躊躇いがちにそう口にした。
ベルには、想う相手がいるんじゃないだろうか? そんな疑念が拭えないこともあり、ルキは本契約に進むべきか正直のところ迷いがあった。
「ええ、もちろん。どうせあと9ヶ月したら、婚約破棄しますし」
だが、ベルは躊躇いなくそう言い切る。
「公爵家と婚約破棄したら、その後は本当にまともな縁談が望めなくなるぞ?」
ベルはまだ19歳だ。今の若く才ある彼女なら、きっと他にもいい縁談があるはずだ。
だというのに、婚約破棄前提の話を進めて将来の可能性を潰す必要はないのではないかとルキは思ってしまう。
「え〜ヤダっ、次期公爵様ってば自分の身も守れないくせに、他人の心配しちゃうんですかぁ? まぁ、やっさし〜」
揶揄うようなベルの言葉にイラっとしつつ、
「ベル、俺は真剣に」
と言いかけたルキを遮って、
「私だって真剣です」
ベルは真面目な顔をしてそう言った。
「何度も言いましたけど、私結婚に興味ないんです。やりたい事、いっぱいありますし。婚約破棄後の私の人生を、ルキ様が心配する必要はないんです」
ベルはとても真面目な顔をして、1冊のノートを差し出した。
それはベルが描くこれから先の未来の計画。
「まずは中流階級以下の貴族〜裕福層の商家をターゲットにドレスのレンタルおよび中古販売ショップの経営でしょ」
その足がかりが欲しいからあなたと婚約するんです、とベルは改めてルキにそう話す。
「それから資金が貯まったら普段着用のドレスのセミオーダー店を作りたいし」
「セミオーダー?」
「オーダードレスは時間とコストがかかり過ぎます。流行は常に最上階級から下に降りてきますから、そこを逃さないにはある程度パターンを作ってあるセミオーダーがいいと思うんですよね」
お金になりそうでしょ? とベルは楽しそうに未来を語る。
「最後は裕福層〜一般庶民をターゲットにした安価な服のブランドを立ち上げて女の子が気軽にオシャレを楽しめるようなお店を経営したいんです」
私が一番やりたいのは、ここですと最終地点を指さしてベルは笑う。
「そのためには安価で上質な生地取引ができる先の開拓でしょ? デザイナーさん達の確保に、従業員の確保。課題は山積みですよ」
だから、私他に構ってる暇なんてないんですと、潰していかないといけない課題がびっしりと書き込まれていた。
ベルのこの夢は一体いつから考えていたのだろう?
何度も何度も追記されたそのノートには余白だけでは足りなくて、紙が継ぎ足されていた。
ぱぁぁっと嬉しそうな顔をしたベルは、明るい声でそう言った。
「ああ、風除け役も申し分なかったし」
そんなベルを見ながらルキは淡々とベルの働きをそう評する。
「……の割に、浮かない顔ですね」
気になることでも? とベルに促されルキはベルの顔をじっとみる。
「……君は、本当に俺と婚約してしまって構わないのか?」
そして、躊躇いがちにそう口にした。
ベルには、想う相手がいるんじゃないだろうか? そんな疑念が拭えないこともあり、ルキは本契約に進むべきか正直のところ迷いがあった。
「ええ、もちろん。どうせあと9ヶ月したら、婚約破棄しますし」
だが、ベルは躊躇いなくそう言い切る。
「公爵家と婚約破棄したら、その後は本当にまともな縁談が望めなくなるぞ?」
ベルはまだ19歳だ。今の若く才ある彼女なら、きっと他にもいい縁談があるはずだ。
だというのに、婚約破棄前提の話を進めて将来の可能性を潰す必要はないのではないかとルキは思ってしまう。
「え〜ヤダっ、次期公爵様ってば自分の身も守れないくせに、他人の心配しちゃうんですかぁ? まぁ、やっさし〜」
揶揄うようなベルの言葉にイラっとしつつ、
「ベル、俺は真剣に」
と言いかけたルキを遮って、
「私だって真剣です」
ベルは真面目な顔をしてそう言った。
「何度も言いましたけど、私結婚に興味ないんです。やりたい事、いっぱいありますし。婚約破棄後の私の人生を、ルキ様が心配する必要はないんです」
ベルはとても真面目な顔をして、1冊のノートを差し出した。
それはベルが描くこれから先の未来の計画。
「まずは中流階級以下の貴族〜裕福層の商家をターゲットにドレスのレンタルおよび中古販売ショップの経営でしょ」
その足がかりが欲しいからあなたと婚約するんです、とベルは改めてルキにそう話す。
「それから資金が貯まったら普段着用のドレスのセミオーダー店を作りたいし」
「セミオーダー?」
「オーダードレスは時間とコストがかかり過ぎます。流行は常に最上階級から下に降りてきますから、そこを逃さないにはある程度パターンを作ってあるセミオーダーがいいと思うんですよね」
お金になりそうでしょ? とベルは楽しそうに未来を語る。
「最後は裕福層〜一般庶民をターゲットにした安価な服のブランドを立ち上げて女の子が気軽にオシャレを楽しめるようなお店を経営したいんです」
私が一番やりたいのは、ここですと最終地点を指さしてベルは笑う。
「そのためには安価で上質な生地取引ができる先の開拓でしょ? デザイナーさん達の確保に、従業員の確保。課題は山積みですよ」
だから、私他に構ってる暇なんてないんですと、潰していかないといけない課題がびっしりと書き込まれていた。
ベルのこの夢は一体いつから考えていたのだろう?
何度も何度も追記されたそのノートには余白だけでは足りなくて、紙が継ぎ足されていた。