結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
採用情報を進路指導に届けた後、一緒に屋敷に帰ろうとルキはベルの姿を探す。
懐かしい校内を歩くルキの視線の先に、ベルの姿はすぐに見つかった。
「………ベル」
呼び止めようとしたところで、後ろにルキがいる事に気づかなかったベルは、
「ハルっ!! やっと見つけたーー!!」
と、とても嬉しそうに声を弾ませ、ひとりの男子学生に抱きついた。
「会いたかった! 全然、うちに来てくれないんだもん」
ベルはあの酔った日のように、満面の笑顔でとても大事な人と接するように、彼の頬を両手で掴み話しかける。
こんな風に接するベルを見たことがないとその光景にルキの心は一気にざらつく。
「無理してない? ちょっと見ないうちにまた大きくなってない?」
「もうさすがに背は伸びないって」
両手を繋いでクルクルと回り出しそうなくらいはしゃぐ彼女を見ていられなくて、
「ベルっ!!」
ルキは思わずそう叫んで足早に2人のそばに駆け寄った。
「あれ? ルキ様がどうしてここに?」
きょとんと驚いた表情をするベルは、この光景を見られても弁明一つせず、相手と繋いだ手も離さない。
それが一層ルキを苛立たせた。
「君は、俺の婚約者だろ」
頭では分かっている。婚約者、なんて名ばかりでベルとはただ利害が一致しただけの関係だと。
所詮ごっこでしかない自分では、彼女の行動を制限することはできない。
だけど、と思ってしまう。
「まぁ、一応そうですけど」
それが何か、と言わんばかりの態度にイライラを募らせたルキは、
「仮にも公爵家の婚約者がこんなところで白昼堂々と浮気はいかがなものだろうか」
と非常に冷たい声でそう言った。
だけど、契約を持ちかけたならせめてその期間は誠実であるべきではないだろうか? とルキはベルに執着する。
そんなルキをじっと見たベルは、
「浮気……って、この子私の弟ですけど」
解せないという顔をして、ルキにハルをそう紹介した。
「はっ?」
おとうと? 情報処理が追いつかず、気の抜けた声を上げるルキに、
「ははっ、姉さんの浮気相手に間違われるなんて、僕も大きくなったなぁ」
のほほんと和やかな声でハルはそう告げた。
「ブルーノ公爵令息様にお目にかかるのは初めてですね。ハルステッド・ストラルと申します。姉がいつもお世話になってます」
にこやかに礼をしたベルの弟に、まだ脳内処理の追いつかないルキが言えたのは、
「……似てないな」
という一言だけだった。
「よく言われます。自分は兄によく似ているそうで」
ハルは気分を害した様子もなく、慣れたようにそう話す。
彼を纏う雰囲気一つとっても、ベルとの共通点を見つけられない。
「こう、なんていうか、ルキ様って本当に私に興味ないですよね。弟いるの知りませんでした?」
家族構成とかって釣り書きに書いてましたよね? と呆れた口調でそう言ったベルは、明らかに機嫌が悪い。
まぁいきなり現れた婚約者に浮気だと罵られたらそうなるよなとルキは額を覆う。
これに関しては完全に自分の落ち度だ。
「姉さん、ブルーノ様だって忙しいんだからそんな言い方しちゃダメだよ?」
そんな姉を嗜めるように、ハルは優しい口調でベルにそう言う。
「だってハル、この人失礼過ぎない? いきなり浮気とか難癖つけてくるんだけど」
が、ベルの対応は変わらない。
「姉さんの物言いだって大概失礼だからね? 外でやったらダメだって」
にこにこにこにこと笑うハルに毒気を抜かれたように、ため息をついたベルは分かったわよと怒りを鎮めた。
「それよりハル! 久しぶりに会ったんだし、このあとお茶でもしましょうよ」
「んー今日はやめとく」
「えーなんでぇ」
久しぶりの再会なのに、ハルがつれないと嘆くベルに、
「姉さん、仮にも婚約者が迎えに来てくれたんだよ? ちゃんと一緒に帰りなさい」
と、ハルは至極真っ当なことを言った。
「ルキ様と帰っても楽しいこと何もないんだけど」
えーっと渋るベルに、
「姉さん?」
絶対零度の微笑みで、ハルはベルを嗜める。
「はーい」
こうなったらハルが自分に構ってくれる事はないと知っているベルは、諦めてルキを放置しスタスタと歩き出す。
そんな背中を見送りながら、
「ブルーノ様、姉は大分自由が過ぎるところがありますが、根は悪い性分じゃないので。短い期間かと思いますが、どうぞよろしくおねがいします。あと姉の事で困ったら遠慮なくご連絡ください」
姉は結構鈍いので頑張ってとにこやかに笑って連絡先を手渡してきたハルを見ながら、やはりベルとは似ていないとルキは心の底からそう思った。
懐かしい校内を歩くルキの視線の先に、ベルの姿はすぐに見つかった。
「………ベル」
呼び止めようとしたところで、後ろにルキがいる事に気づかなかったベルは、
「ハルっ!! やっと見つけたーー!!」
と、とても嬉しそうに声を弾ませ、ひとりの男子学生に抱きついた。
「会いたかった! 全然、うちに来てくれないんだもん」
ベルはあの酔った日のように、満面の笑顔でとても大事な人と接するように、彼の頬を両手で掴み話しかける。
こんな風に接するベルを見たことがないとその光景にルキの心は一気にざらつく。
「無理してない? ちょっと見ないうちにまた大きくなってない?」
「もうさすがに背は伸びないって」
両手を繋いでクルクルと回り出しそうなくらいはしゃぐ彼女を見ていられなくて、
「ベルっ!!」
ルキは思わずそう叫んで足早に2人のそばに駆け寄った。
「あれ? ルキ様がどうしてここに?」
きょとんと驚いた表情をするベルは、この光景を見られても弁明一つせず、相手と繋いだ手も離さない。
それが一層ルキを苛立たせた。
「君は、俺の婚約者だろ」
頭では分かっている。婚約者、なんて名ばかりでベルとはただ利害が一致しただけの関係だと。
所詮ごっこでしかない自分では、彼女の行動を制限することはできない。
だけど、と思ってしまう。
「まぁ、一応そうですけど」
それが何か、と言わんばかりの態度にイライラを募らせたルキは、
「仮にも公爵家の婚約者がこんなところで白昼堂々と浮気はいかがなものだろうか」
と非常に冷たい声でそう言った。
だけど、契約を持ちかけたならせめてその期間は誠実であるべきではないだろうか? とルキはベルに執着する。
そんなルキをじっと見たベルは、
「浮気……って、この子私の弟ですけど」
解せないという顔をして、ルキにハルをそう紹介した。
「はっ?」
おとうと? 情報処理が追いつかず、気の抜けた声を上げるルキに、
「ははっ、姉さんの浮気相手に間違われるなんて、僕も大きくなったなぁ」
のほほんと和やかな声でハルはそう告げた。
「ブルーノ公爵令息様にお目にかかるのは初めてですね。ハルステッド・ストラルと申します。姉がいつもお世話になってます」
にこやかに礼をしたベルの弟に、まだ脳内処理の追いつかないルキが言えたのは、
「……似てないな」
という一言だけだった。
「よく言われます。自分は兄によく似ているそうで」
ハルは気分を害した様子もなく、慣れたようにそう話す。
彼を纏う雰囲気一つとっても、ベルとの共通点を見つけられない。
「こう、なんていうか、ルキ様って本当に私に興味ないですよね。弟いるの知りませんでした?」
家族構成とかって釣り書きに書いてましたよね? と呆れた口調でそう言ったベルは、明らかに機嫌が悪い。
まぁいきなり現れた婚約者に浮気だと罵られたらそうなるよなとルキは額を覆う。
これに関しては完全に自分の落ち度だ。
「姉さん、ブルーノ様だって忙しいんだからそんな言い方しちゃダメだよ?」
そんな姉を嗜めるように、ハルは優しい口調でベルにそう言う。
「だってハル、この人失礼過ぎない? いきなり浮気とか難癖つけてくるんだけど」
が、ベルの対応は変わらない。
「姉さんの物言いだって大概失礼だからね? 外でやったらダメだって」
にこにこにこにこと笑うハルに毒気を抜かれたように、ため息をついたベルは分かったわよと怒りを鎮めた。
「それよりハル! 久しぶりに会ったんだし、このあとお茶でもしましょうよ」
「んー今日はやめとく」
「えーなんでぇ」
久しぶりの再会なのに、ハルがつれないと嘆くベルに、
「姉さん、仮にも婚約者が迎えに来てくれたんだよ? ちゃんと一緒に帰りなさい」
と、ハルは至極真っ当なことを言った。
「ルキ様と帰っても楽しいこと何もないんだけど」
えーっと渋るベルに、
「姉さん?」
絶対零度の微笑みで、ハルはベルを嗜める。
「はーい」
こうなったらハルが自分に構ってくれる事はないと知っているベルは、諦めてルキを放置しスタスタと歩き出す。
そんな背中を見送りながら、
「ブルーノ様、姉は大分自由が過ぎるところがありますが、根は悪い性分じゃないので。短い期間かと思いますが、どうぞよろしくおねがいします。あと姉の事で困ったら遠慮なくご連絡ください」
姉は結構鈍いので頑張ってとにこやかに笑って連絡先を手渡してきたハルを見ながら、やはりベルとは似ていないとルキは心の底からそう思った。