結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
その2、伯爵令嬢と兄夫婦。
上機嫌で帰宅したベルは、
「やっふー! 大口契約取ってきたぜー!」
ガッツポーズと共に開口一番にそう叫ぶ。それは商談が上手く行った時のベルのお決まりのセリフ。
「いや、お前今日見合いだろ? しかも断る予定の」
おかえりと出迎えたベルの兄であるキース・ストラル伯爵は、何商談成立みたいなノリで帰ってきてんの? と呆れた口調でそう言った。
そんな兄の頭上に、
「あ、私婚約したから」
と、ベルは爆弾を投下した。
「はぁ?」
「んで、1年後に婚約破棄予定だから」
「はぁぁあ? ちょっ、ベル、お前本当、マジで何して来たんだ?」
詳しく事情を聞こうと伯爵が声を上げたところで、
ガッシャーン
背後で大きな物音がし、口元を両手で覆って大きな金色の目を見開いた義姉のベロニカが、
「うちの、可愛いベルさんが婚約破棄ですって?」
私の可愛い義妹を袖にしようとしているのは一体どこの馬の骨でしょう? と冷気漂う声でそう言った。
ベロニカはにこやかに笑いどこからかチェーンソーを取り出す。
「ああ、確かブルーノ公爵家でしたね。私、ちょっとそこまでカチコミに行って参ります」
「ちょ、お義姉様! 落ち着こう? 一旦とりあえず落ち着こう!? っていうかこわっ!! 待った! チェーンソーしまって。出ていかないでーー」
お兄様止めてーと絶叫するベルとチェーンソー片手に今にもカチコミに行きそうなベロニカ両者に鉄拳を落とした伯爵は、
「2人とも正座ーー!」
カオスが過ぎるとため息交じりに場を収めた。
強制的に正座させられたベルは、本日のお見合いについて詳細を説明した。
「ベ〜ル〜? お前、マジで何してんだ。この馬鹿タレが」
話を聞いた伯爵は頭をガシガシとかいて、やっぱり行かせるんじゃなかったと後悔する。
「えーだって、良い機会かなって」
かねてから練ってあるプランがあってとベルは今後の事業計画書を取り出し伯爵とベロニカに見せる。
「せっかくのビジネスチャンス掴まないなんてもったいない! 私、上流階級のお嬢様方と仲良くなってクローゼットの不要な衣装全部根こそぎ買い付けてみせるわ」
物があればうちみたいに貧乏貴族ご令嬢相手に貸衣装屋だってできるはずと今後の商売を情熱的に語るベルに、伯爵は呆れたようにため息をつく。
兄に反対される事は分かっていたので、義姉を味方につけるしかない。
「……お義姉様も反対?」
ベルは上目遣いにベロニカにそう尋ねると、
「ベルさんが捨てる側なら、私は別によいのですよ」
満面の笑顔でベロニカはぐっと親指を立てて賛成した。
「やっふー! 大口契約取ってきたぜー!」
ガッツポーズと共に開口一番にそう叫ぶ。それは商談が上手く行った時のベルのお決まりのセリフ。
「いや、お前今日見合いだろ? しかも断る予定の」
おかえりと出迎えたベルの兄であるキース・ストラル伯爵は、何商談成立みたいなノリで帰ってきてんの? と呆れた口調でそう言った。
そんな兄の頭上に、
「あ、私婚約したから」
と、ベルは爆弾を投下した。
「はぁ?」
「んで、1年後に婚約破棄予定だから」
「はぁぁあ? ちょっ、ベル、お前本当、マジで何して来たんだ?」
詳しく事情を聞こうと伯爵が声を上げたところで、
ガッシャーン
背後で大きな物音がし、口元を両手で覆って大きな金色の目を見開いた義姉のベロニカが、
「うちの、可愛いベルさんが婚約破棄ですって?」
私の可愛い義妹を袖にしようとしているのは一体どこの馬の骨でしょう? と冷気漂う声でそう言った。
ベロニカはにこやかに笑いどこからかチェーンソーを取り出す。
「ああ、確かブルーノ公爵家でしたね。私、ちょっとそこまでカチコミに行って参ります」
「ちょ、お義姉様! 落ち着こう? 一旦とりあえず落ち着こう!? っていうかこわっ!! 待った! チェーンソーしまって。出ていかないでーー」
お兄様止めてーと絶叫するベルとチェーンソー片手に今にもカチコミに行きそうなベロニカ両者に鉄拳を落とした伯爵は、
「2人とも正座ーー!」
カオスが過ぎるとため息交じりに場を収めた。
強制的に正座させられたベルは、本日のお見合いについて詳細を説明した。
「ベ〜ル〜? お前、マジで何してんだ。この馬鹿タレが」
話を聞いた伯爵は頭をガシガシとかいて、やっぱり行かせるんじゃなかったと後悔する。
「えーだって、良い機会かなって」
かねてから練ってあるプランがあってとベルは今後の事業計画書を取り出し伯爵とベロニカに見せる。
「せっかくのビジネスチャンス掴まないなんてもったいない! 私、上流階級のお嬢様方と仲良くなってクローゼットの不要な衣装全部根こそぎ買い付けてみせるわ」
物があればうちみたいに貧乏貴族ご令嬢相手に貸衣装屋だってできるはずと今後の商売を情熱的に語るベルに、伯爵は呆れたようにため息をつく。
兄に反対される事は分かっていたので、義姉を味方につけるしかない。
「……お義姉様も反対?」
ベルは上目遣いにベロニカにそう尋ねると、
「ベルさんが捨てる側なら、私は別によいのですよ」
満面の笑顔でベロニカはぐっと親指を立てて賛成した。