結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
予告通りベルが出て行って2週間が経った。屋敷はどことなく静かで、シルヴィアもとてもおとなしく元気がない。
それでも今日は久しぶりにベルが来ると朝から楽しそうにしていたから、シルヴィアとベルが好きなケーキでも買って早めに帰るかとルキが庁舎を出ようとしたところで、見覚えのある学生服が目に止まった。
「突然の訪問、お許しください」
折目正しく礼をしてそう言ったのは、ベルの弟のハルステッドだった。
「本日の訪問の断りの連絡?」
場所を移したルキがハルに用件を尋ねると、ハルは直ぐにベルが本日公爵家に行けなくなった事をすまなさそうに告げた。
「ベルが当日キャンセルなんて珍しいな」
そしてわざわざハルが来た事に驚く。この程度の内容など、電話で言付ければ済む話だ。
「シルヴィアが、がっかりするだろうな」
そう口にしながら、ルキは今日は来ないのかと残念に思っている自分に気づき戸惑う。そんなルキを見て、とても人好きのする笑顔を浮かべたハルは、
「お願いがあるのですが」
と、本題を切り出した。
「お願い? ハルが俺に?」
頷くハルを見て、だから電話ではなかったのかと納得したルキは続きを促す。
「すみませんが、ルキ様。もし、差し支えなければ、姉の様子を見て来ていただけませんか?」
そう言ってベルから預かっている鍵をルキに渡した。
「ベルの様子?」
「電話で頼まれた時声掠れてたんで、多分そろそろ十中八九行き倒れてます」
不思議そうに尋ねたルキに、ハルはため息混じりにそう告げる。
「自分で訪問キャンセルの連絡入れないのも、多分ルキ様に体調不良に気づかれたくないからなんだと思うんですよね。アレで姉は結構カッコつけなので」
他人に弱ってるとこ見せるのダメなタイプなんですとハルは心配そうにそう告げる。
「それは……俺が行かない方がいいのでは?」
物凄く嫌そうな顔で舌打ちするベルの顔が浮かんで、ルキは苦笑する。
多分偽物の婚約者が行くよりも、最愛の弟の訪問の方がベルは喜ぶとルキは断ろうとするが、
「そうですか、無理にとは言いません」
わざとらしくため息をついたハルは、
「あの人言葉足らずだし、弱ってるときほど本音も出やすいからチャンスかなぁと思ったんですけど……余計なお世話でしたね。僕が行きます」
放っては置けないのでと爽やかな笑顔でそう言った。
「普段あんなですけど、割と寂しがり屋で可愛いとこもあるんですけどね? 弱ってる時限定で」
見ておいた方がいいと思いますけど無理は言いませんと、にこにこにこにこと笑う顔を見て、ああ間違いなくベルの弟だとルキはハルの中にベルとの類似点を見つける。
「……なんで俺にそれを言う」
「んー自分の勘です。多分、姉にはルキ様みたいなタイプが必要なので」
まだ行くとも言ってないのに、ありがとうございますと看病グッズ一式をルキに押し付けて、
「アレで結構チョロい面もあるので、姉の弱みが握れるかもですよ?」
ハルは楽しそうにそう言った。
それでも今日は久しぶりにベルが来ると朝から楽しそうにしていたから、シルヴィアとベルが好きなケーキでも買って早めに帰るかとルキが庁舎を出ようとしたところで、見覚えのある学生服が目に止まった。
「突然の訪問、お許しください」
折目正しく礼をしてそう言ったのは、ベルの弟のハルステッドだった。
「本日の訪問の断りの連絡?」
場所を移したルキがハルに用件を尋ねると、ハルは直ぐにベルが本日公爵家に行けなくなった事をすまなさそうに告げた。
「ベルが当日キャンセルなんて珍しいな」
そしてわざわざハルが来た事に驚く。この程度の内容など、電話で言付ければ済む話だ。
「シルヴィアが、がっかりするだろうな」
そう口にしながら、ルキは今日は来ないのかと残念に思っている自分に気づき戸惑う。そんなルキを見て、とても人好きのする笑顔を浮かべたハルは、
「お願いがあるのですが」
と、本題を切り出した。
「お願い? ハルが俺に?」
頷くハルを見て、だから電話ではなかったのかと納得したルキは続きを促す。
「すみませんが、ルキ様。もし、差し支えなければ、姉の様子を見て来ていただけませんか?」
そう言ってベルから預かっている鍵をルキに渡した。
「ベルの様子?」
「電話で頼まれた時声掠れてたんで、多分そろそろ十中八九行き倒れてます」
不思議そうに尋ねたルキに、ハルはため息混じりにそう告げる。
「自分で訪問キャンセルの連絡入れないのも、多分ルキ様に体調不良に気づかれたくないからなんだと思うんですよね。アレで姉は結構カッコつけなので」
他人に弱ってるとこ見せるのダメなタイプなんですとハルは心配そうにそう告げる。
「それは……俺が行かない方がいいのでは?」
物凄く嫌そうな顔で舌打ちするベルの顔が浮かんで、ルキは苦笑する。
多分偽物の婚約者が行くよりも、最愛の弟の訪問の方がベルは喜ぶとルキは断ろうとするが、
「そうですか、無理にとは言いません」
わざとらしくため息をついたハルは、
「あの人言葉足らずだし、弱ってるときほど本音も出やすいからチャンスかなぁと思ったんですけど……余計なお世話でしたね。僕が行きます」
放っては置けないのでと爽やかな笑顔でそう言った。
「普段あんなですけど、割と寂しがり屋で可愛いとこもあるんですけどね? 弱ってる時限定で」
見ておいた方がいいと思いますけど無理は言いませんと、にこにこにこにこと笑う顔を見て、ああ間違いなくベルの弟だとルキはハルの中にベルとの類似点を見つける。
「……なんで俺にそれを言う」
「んー自分の勘です。多分、姉にはルキ様みたいなタイプが必要なので」
まだ行くとも言ってないのに、ありがとうございますと看病グッズ一式をルキに押し付けて、
「アレで結構チョロい面もあるので、姉の弱みが握れるかもですよ?」
ハルは楽しそうにそう言った。