結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
数日後。
「というわけで、全快です。お世話かけました」
にこやかに笑ったベルが、珍しくルキの部屋を突撃する。
本日はメイド服は着ておらず、かと言って貴族の正しいご令嬢と呼ぶには幾分か着崩した動きやすい服装で、服に合わせて化粧もしっかり施し、髪は簪で器用にまとめており白いうなじが見えている。
「それはいいんだけど、コレ何?」
じゃ、とりあえずティータイムとしましょうか? と勝手にテーブルにセッティングを始めたベルに問いかけると、
「ルキ様野菜嫌い克服計画」
と、端的にそしてにこやかに答えが返ってきた。
「…………野菜、はほどほどで」
「いい大人が、トマトしか食べられないって、恥ずかしくありません? さぁ、9ヶ月でガツガツ苦手克服しましょうか?」
ふふふふっと黒い笑みを浮かべ、ベルはルキの前に素朴な外見のオレンジ色のケーキを差し出す。
「まぁ、まずはお菓子にしてみました」
ほら、婚約者がわざわざ手製の菓子持参ですよと早く食べろと急かす。
「……待って、これ何入ってるの?」
手作りに若干抵抗感のあるルキは今回は作ってるとこ見てないしと、見た事のない食べ物を前にたじろぐ。
「安心してください。あなたが過去もらったみたいに髪の毛だの爪だの入ってませんから」
「なんで知ってるの?」
「似た事例が家に2人ほどいるので」
とため息をついたベルは食べ物を粗末にする人が一番嫌いですと刺々しく言った。
なお躊躇うルキに、ほら大丈夫とルキの目の前で1口サイズに切ってフォークで刺し、生クリームを少し付けて口開けてと子どもみたいに食べさせようとする。
構図的には彼女が彼氏に手作り菓子を手ずから食べさせている図なのに、まるで色気がないなとルキはどうでもいい事を考えながら観念して口を開ける。
「あ、これは結構……美味しい、かも」
「ルキ様意外と庶民料理平気ですよね」
ちなみににんじんとかぼちゃでしたとケーキの材料を伝え、ベルはえらいえらいと小さな子どもにするようにルキの頭を撫でた。
「ルキ様って髪猫っ毛なんですね。ふふ、ふわふわで触り心地いいかも」
パーティーでのエスコートの時を除けば、手を伸ばして来る事などけしてなかったベルに触れられ、ルキは大人しくされるがままで微笑む。
ベルに触られるのは平気だと思うと同時にもう少し彼女に触れてみたいと思う自分自身の心境の変化に戸惑いながら、ルキはベルの淹れてくれた紅茶に手を伸ばしたのだった。
「というわけで、全快です。お世話かけました」
にこやかに笑ったベルが、珍しくルキの部屋を突撃する。
本日はメイド服は着ておらず、かと言って貴族の正しいご令嬢と呼ぶには幾分か着崩した動きやすい服装で、服に合わせて化粧もしっかり施し、髪は簪で器用にまとめており白いうなじが見えている。
「それはいいんだけど、コレ何?」
じゃ、とりあえずティータイムとしましょうか? と勝手にテーブルにセッティングを始めたベルに問いかけると、
「ルキ様野菜嫌い克服計画」
と、端的にそしてにこやかに答えが返ってきた。
「…………野菜、はほどほどで」
「いい大人が、トマトしか食べられないって、恥ずかしくありません? さぁ、9ヶ月でガツガツ苦手克服しましょうか?」
ふふふふっと黒い笑みを浮かべ、ベルはルキの前に素朴な外見のオレンジ色のケーキを差し出す。
「まぁ、まずはお菓子にしてみました」
ほら、婚約者がわざわざ手製の菓子持参ですよと早く食べろと急かす。
「……待って、これ何入ってるの?」
手作りに若干抵抗感のあるルキは今回は作ってるとこ見てないしと、見た事のない食べ物を前にたじろぐ。
「安心してください。あなたが過去もらったみたいに髪の毛だの爪だの入ってませんから」
「なんで知ってるの?」
「似た事例が家に2人ほどいるので」
とため息をついたベルは食べ物を粗末にする人が一番嫌いですと刺々しく言った。
なお躊躇うルキに、ほら大丈夫とルキの目の前で1口サイズに切ってフォークで刺し、生クリームを少し付けて口開けてと子どもみたいに食べさせようとする。
構図的には彼女が彼氏に手作り菓子を手ずから食べさせている図なのに、まるで色気がないなとルキはどうでもいい事を考えながら観念して口を開ける。
「あ、これは結構……美味しい、かも」
「ルキ様意外と庶民料理平気ですよね」
ちなみににんじんとかぼちゃでしたとケーキの材料を伝え、ベルはえらいえらいと小さな子どもにするようにルキの頭を撫でた。
「ルキ様って髪猫っ毛なんですね。ふふ、ふわふわで触り心地いいかも」
パーティーでのエスコートの時を除けば、手を伸ばして来る事などけしてなかったベルに触れられ、ルキは大人しくされるがままで微笑む。
ベルに触られるのは平気だと思うと同時にもう少し彼女に触れてみたいと思う自分自身の心境の変化に戸惑いながら、ルキはベルの淹れてくれた紅茶に手を伸ばしたのだった。