結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
その9、伯爵令嬢と誕生日。
ルキと観劇に行く約束をした誕生日当日。ベルは久しぶりに早退することにした。
よし、帰ろうといつもよりも少しいいお出かけ用の服に着替えたベルに向かって、
「ベルさん! お誕生日おめでとうございます」
退社のタイミングを見計らったように現れたベロニカがパーンっとクラッカーを鳴らす。
ベロニカが持っているクラッカーはどう見ても小さなもの一つなのに、そのクラッカーの体積とはどう見ても釣り合わないほどの紙吹雪と花びらと万国旗が盛大に宙に舞って部屋中の床に散らばった。
「わぁーお義姉様ありがとうございます!」
満面の笑みでお礼をいったあと、辺りを見回したベルは、すっごく嬉しいけど掃除大変そうと感想をもらす。
「大丈夫ですよ! 今週伯爵が掃除当番なんで」
ぐっと親指を立てて、ノープロブレムと言い切ったベロニカを見ながら、あ、コレ絶対後で怒られるパターンと思ったけれど、ニコニコ笑うベロニカが可愛かったのでまぁ良いかとベルは流されることにした。
そんなベルの足元にいつの間にか金の目をした黒猫がわんさかやってきて、そのうちの何匹かが口で引っ張り垂れ幕を広げる。
それには肉球スタンプが押されており、
『ベルにゃんおめでとう』
と器用に書いてあった。
「やーん、猫ちゃんたちもありがとう!」
可愛い猫たちに悶えながら、そのうちの1匹を抱き抱えたベルは、
「お義姉様って本当に猫に好かれますよね」
と器用ねと垂れ幕を受け取る。
「ふふ、そうなんです。うちの子たちはみんなできる子ですし、助かってます」
垂れ幕私も手伝いましたとドヤ顔で話すベロニカにもベルは改めてお礼を言う。
「さすが、お義姉様の猫ちゃんたちですね」
嬉しそうに微笑むベロニカに釣られるようにベルは笑う。
ベロニカは初めて会った時から不思議な雰囲気を持つ人だった。まるで月の光を集めたような銀糸に猫のような金の目を持つ彼女は、いつ見ても美しく、そして彼女の周りには不可解な現象が時々起きる。
例えば、ベロニカに懐いている猫は何故か猫アレルギーの兄も平気、だとか。
例えば、猫なのに字の読み書きどころか器用に前足を駆使してタイピングをこなし、手紙を出せる、とか。
だが、そんな事は些細な事だとベルは思う。
彼女がどれだけ不思議な人であったとしても、ベルにとってベロニカは大好きなお義姉様であり、大切な家族なのだから。
「さて、散らかすだけ散らかしたので、あとは出張中の伯爵に丸投げるとして、ベルさん今日デートでしたよね?」
アレ、そんな話したかしら? と思いつつ、まぁお義姉様だしと納得したベルは、
「別にデートではないですけど、お誕生日のお祝いに観劇に連れて行ってくれるらしくって」
と早退理由を素直に伝える。
「その格好で行かれるおつもりですか?」
ベルの格好を見たベロニカはデートなのにと少し残念そうな顔で尋ねる。
「一応ドレスコードは押さえているので良いかなって」
観劇に行くだけだし、相手は契約婚約者のルキだ。
ガッツリめかし込んで行けば浮かれているみたいでなんだか気恥ずかしいという理由から、劇場に行くには最低限合格ラインのシンプルなドレスを選択した。
「ダメですっ! せっかくのお誕生日ですよ。可愛いくしましょう」
そんなベルにダメ出しをしたベロニカは、
「というわけで私と伯爵からのプレゼントはコレです」
と綺麗な刺繍とキラキラのビジューが散りばめられた星空みたいなサマードレスとそれに合わせたミュールが手渡された。
「うわぁ、すごく可愛い」
感嘆の声を上げるベルに満足気に頷いたベロニカは、
「仕上げはコチラ! 新作コスメなのですよ」
と、さらにコスメセットを取り出した。
「肌に優しくて、化粧崩れがしにくいコスメの開発を研究員の子達が頑張ってくれたので」
「あ、領地に新しく作った学校兼研究所の?」
「そうです。恋せよ! 乙女プロジェクト」
ババーンっと効果音をつけてベロニカはドヤ顔でコスメの説明を始めた。
よし、帰ろうといつもよりも少しいいお出かけ用の服に着替えたベルに向かって、
「ベルさん! お誕生日おめでとうございます」
退社のタイミングを見計らったように現れたベロニカがパーンっとクラッカーを鳴らす。
ベロニカが持っているクラッカーはどう見ても小さなもの一つなのに、そのクラッカーの体積とはどう見ても釣り合わないほどの紙吹雪と花びらと万国旗が盛大に宙に舞って部屋中の床に散らばった。
「わぁーお義姉様ありがとうございます!」
満面の笑みでお礼をいったあと、辺りを見回したベルは、すっごく嬉しいけど掃除大変そうと感想をもらす。
「大丈夫ですよ! 今週伯爵が掃除当番なんで」
ぐっと親指を立てて、ノープロブレムと言い切ったベロニカを見ながら、あ、コレ絶対後で怒られるパターンと思ったけれど、ニコニコ笑うベロニカが可愛かったのでまぁ良いかとベルは流されることにした。
そんなベルの足元にいつの間にか金の目をした黒猫がわんさかやってきて、そのうちの何匹かが口で引っ張り垂れ幕を広げる。
それには肉球スタンプが押されており、
『ベルにゃんおめでとう』
と器用に書いてあった。
「やーん、猫ちゃんたちもありがとう!」
可愛い猫たちに悶えながら、そのうちの1匹を抱き抱えたベルは、
「お義姉様って本当に猫に好かれますよね」
と器用ねと垂れ幕を受け取る。
「ふふ、そうなんです。うちの子たちはみんなできる子ですし、助かってます」
垂れ幕私も手伝いましたとドヤ顔で話すベロニカにもベルは改めてお礼を言う。
「さすが、お義姉様の猫ちゃんたちですね」
嬉しそうに微笑むベロニカに釣られるようにベルは笑う。
ベロニカは初めて会った時から不思議な雰囲気を持つ人だった。まるで月の光を集めたような銀糸に猫のような金の目を持つ彼女は、いつ見ても美しく、そして彼女の周りには不可解な現象が時々起きる。
例えば、ベロニカに懐いている猫は何故か猫アレルギーの兄も平気、だとか。
例えば、猫なのに字の読み書きどころか器用に前足を駆使してタイピングをこなし、手紙を出せる、とか。
だが、そんな事は些細な事だとベルは思う。
彼女がどれだけ不思議な人であったとしても、ベルにとってベロニカは大好きなお義姉様であり、大切な家族なのだから。
「さて、散らかすだけ散らかしたので、あとは出張中の伯爵に丸投げるとして、ベルさん今日デートでしたよね?」
アレ、そんな話したかしら? と思いつつ、まぁお義姉様だしと納得したベルは、
「別にデートではないですけど、お誕生日のお祝いに観劇に連れて行ってくれるらしくって」
と早退理由を素直に伝える。
「その格好で行かれるおつもりですか?」
ベルの格好を見たベロニカはデートなのにと少し残念そうな顔で尋ねる。
「一応ドレスコードは押さえているので良いかなって」
観劇に行くだけだし、相手は契約婚約者のルキだ。
ガッツリめかし込んで行けば浮かれているみたいでなんだか気恥ずかしいという理由から、劇場に行くには最低限合格ラインのシンプルなドレスを選択した。
「ダメですっ! せっかくのお誕生日ですよ。可愛いくしましょう」
そんなベルにダメ出しをしたベロニカは、
「というわけで私と伯爵からのプレゼントはコレです」
と綺麗な刺繍とキラキラのビジューが散りばめられた星空みたいなサマードレスとそれに合わせたミュールが手渡された。
「うわぁ、すごく可愛い」
感嘆の声を上げるベルに満足気に頷いたベロニカは、
「仕上げはコチラ! 新作コスメなのですよ」
と、さらにコスメセットを取り出した。
「肌に優しくて、化粧崩れがしにくいコスメの開発を研究員の子達が頑張ってくれたので」
「あ、領地に新しく作った学校兼研究所の?」
「そうです。恋せよ! 乙女プロジェクト」
ババーンっと効果音をつけてベロニカはドヤ顔でコスメの説明を始めた。