結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
約束の場所に辿り着く前にルキがどこにいるのか分かってしまった。
人の視線すごい。今からアレに声かけるのかと思うとベルはすぐさま回れ右をしたくなる。
普段意識することはないが、遠巻きで見るとルキの顔面偏差値は確かにずば抜けて高く、容姿端麗という言葉がしっくりくるほど目立つ。
声をかける女性たちも綺麗で自分に自信ありげな美人が多いし、このまま放置したら良縁に恵まれるかもなんてベルは思うが、女性に声をかけられるたび、待ち人ではなかったとしゅんとなるルキの様子を見て、ベルは肩を振るわせ笑いそうになる。
犬だったら耳もしっぽも元気なく垂れていそうだ。
時計に視線を落として声をかけてくる女性たちをあしらいながら、自分のことを待っているルキが、忠犬のように見えて放って置けないなとベルは覚悟を決めた。
「すみません、お待たせしました」
「いや、俺も今来たとこで」
明らかなルキの嘘に、ちょっと前から見てましたなんて言えないベルは、
「? どうしました?」
不自然に途切れてこちらをまじまじと見てくる濃紺の瞳に不思議そうに問いかける。
「いや、随分雰囲気が違うなって」
「ふふ、出掛けにお義姉様とハルにいじられまして」
「……可愛い、と……思う」
ふいっと視線を外して、ぼそっとそう言ったルキにこんな目立つ人に言われてもとベルは苦笑する。
着飾ればそれなりに見れるだろうが、ベルは自分の容姿が人並みであることを自覚している。
今日自分が可愛いのだとすればそれは間違いなくドレスとメイクの力だ。
「あはは、ありがとうございます。義姉と弟のセンスがいいもので」
さらっと流したベルに、手を差し出したルキは、
「まだ時間があるから、お茶でもしようか」
そう言って当たり前のようにエスコートした。
「……ここって」
連れて来られたのは、上流階級のお嬢様方が沢山いらっしゃる可愛いらしいカフェだった。
カップルもいるが、圧倒的に男性は少ない。
その上個室ではないため貴族において彼を知らない者はいないというくらい有名人のルキと一緒にいれば否応なく女子達からの視線が痛い。
「なんでここを選んだんですか?」
普段のルキなら絶対足を運ばないであろうその店。
ベルとしては好みではあるができればルキではなくシルヴィアと来たい店である。
「最近話題の店らしい。シルのオススメ」
ケーキが一押しなんだとと外のためか表情が固いルキがメニュー表に視線を落としながらそう言った。
「あのルキ様。メニュー表に値段書いてないんですけど」
どのメニューにも値段が書いておらず、周りは上流階級の子女ばかり。場違い感半端ないと思いながら、ベルは小声でルキにつぶやく。
「何か問題でも?」
そんなベルの訴えに、そもそも今までの人生で値段と言うものを見て何かを購入したことがないルキは、心底不思議そうにベルに問い返す。
「…………手持ち足らなかったら借りても良いですか? 流石に想定してなくて」
そんなルキにこっそりため息をついたベルは、いつもより多めに入れた財布の中身を思い出しながら申し訳なさそうにルキに頼む。
お屋敷に帰ったら即座に返しますので、と言ったベルを、
「ベル。そんなの気にしなくていいから、好きなの頼めばいいだろ。誕生日なんだし」
ますます不思議そうな顔をして濃紺の瞳はベルを見返した。
人の視線すごい。今からアレに声かけるのかと思うとベルはすぐさま回れ右をしたくなる。
普段意識することはないが、遠巻きで見るとルキの顔面偏差値は確かにずば抜けて高く、容姿端麗という言葉がしっくりくるほど目立つ。
声をかける女性たちも綺麗で自分に自信ありげな美人が多いし、このまま放置したら良縁に恵まれるかもなんてベルは思うが、女性に声をかけられるたび、待ち人ではなかったとしゅんとなるルキの様子を見て、ベルは肩を振るわせ笑いそうになる。
犬だったら耳もしっぽも元気なく垂れていそうだ。
時計に視線を落として声をかけてくる女性たちをあしらいながら、自分のことを待っているルキが、忠犬のように見えて放って置けないなとベルは覚悟を決めた。
「すみません、お待たせしました」
「いや、俺も今来たとこで」
明らかなルキの嘘に、ちょっと前から見てましたなんて言えないベルは、
「? どうしました?」
不自然に途切れてこちらをまじまじと見てくる濃紺の瞳に不思議そうに問いかける。
「いや、随分雰囲気が違うなって」
「ふふ、出掛けにお義姉様とハルにいじられまして」
「……可愛い、と……思う」
ふいっと視線を外して、ぼそっとそう言ったルキにこんな目立つ人に言われてもとベルは苦笑する。
着飾ればそれなりに見れるだろうが、ベルは自分の容姿が人並みであることを自覚している。
今日自分が可愛いのだとすればそれは間違いなくドレスとメイクの力だ。
「あはは、ありがとうございます。義姉と弟のセンスがいいもので」
さらっと流したベルに、手を差し出したルキは、
「まだ時間があるから、お茶でもしようか」
そう言って当たり前のようにエスコートした。
「……ここって」
連れて来られたのは、上流階級のお嬢様方が沢山いらっしゃる可愛いらしいカフェだった。
カップルもいるが、圧倒的に男性は少ない。
その上個室ではないため貴族において彼を知らない者はいないというくらい有名人のルキと一緒にいれば否応なく女子達からの視線が痛い。
「なんでここを選んだんですか?」
普段のルキなら絶対足を運ばないであろうその店。
ベルとしては好みではあるができればルキではなくシルヴィアと来たい店である。
「最近話題の店らしい。シルのオススメ」
ケーキが一押しなんだとと外のためか表情が固いルキがメニュー表に視線を落としながらそう言った。
「あのルキ様。メニュー表に値段書いてないんですけど」
どのメニューにも値段が書いておらず、周りは上流階級の子女ばかり。場違い感半端ないと思いながら、ベルは小声でルキにつぶやく。
「何か問題でも?」
そんなベルの訴えに、そもそも今までの人生で値段と言うものを見て何かを購入したことがないルキは、心底不思議そうにベルに問い返す。
「…………手持ち足らなかったら借りても良いですか? 流石に想定してなくて」
そんなルキにこっそりため息をついたベルは、いつもより多めに入れた財布の中身を思い出しながら申し訳なさそうにルキに頼む。
お屋敷に帰ったら即座に返しますので、と言ったベルを、
「ベル。そんなの気にしなくていいから、好きなの頼めばいいだろ。誕生日なんだし」
ますます不思議そうな顔をして濃紺の瞳はベルを見返した。